L'heure Bleue


ヨスミさん

ご紹介

遠近よりかなり年下の方なのですが、もう今の時点で夢小説がめちゃくちゃ上手い。そして書くのが早い。才能が末恐ろしい。遠近がこのぐらいの年の頃は電車のドアに挟まれる緑間真太郎とか沖田総悟の誕生日にパン作る話とか訳の分からん話ばかりを書いていたので時代は(良い方へ)変わったな……と感じますね。令和って素晴らしい。夢小説界の新たな光に感謝。勝手に決めたイメージソングはリーガルリリーの「リッケンバッカー」です。僕だけのロックンロールをずっとずっとかき鳴らしていてほしい(何の話?)

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それでは気を取り直して書評のお時間です!張り切っていっちゃおー!

勝手に書評を書くコーナー

この感性をずっと大切にしてほしいで賞
『きみの肺を満たす薄暮/伏黒恵』
ほんのり薄暗くてほんのり幸せを感じる話を書かせたら本当に他の追随を許さないところがこの方の持ち味だと勝手に思っているので、それが特に顕著だなと思うお話をピックアップしました。何をどうしたらこんな話が書けるんだろうね? そこかしこから人生経験の差を感じてしまいます(まるでダメな大人)
作中の「恵ちゃんさぁ、勝手にわたしの分まで不幸を背負わないでくれるかなぁ」という台詞が特に好きです。勝手に人の不幸まで背負おうとする伏黒恵!君そういうとこあるよね〜!って読んでてテンション上がっちゃいました。伏黒恵に対する解像度がめちゃくちゃ高くて惚れ惚れしてしまいます。


研ぎ澄まされたナイフのようで賞
『鱗粉を拭う/犬飼澄晴』
思春期に書いた小説は思春期特有のぐっと胸に迫るものがある、という独自の理論を持っているんですが、こちらのお話を読んでこの理論が間違いではないことを確信しました。こういう話をサラッと出せるところがヤバい。研ぎ澄まされすぎていてヤバい。やり場のない後ろめたさをボーダーの男と共有するなら私も犬飼澄晴がいいです。
「死に方の美学なんてもの、澄晴にでも渡してしまえばいいのだ。失ったものに気づかないようにするには、ボーダーにいるしかないのだと思っていた。でもきっとそんなことはない。あちこちに転がっていたものを、見て見ぬふりをやめればきっと私は幸せになれるわ。」特にここの終わり方が好き。これを夢小説で書くのがとんでもないなって読み返す度に思います。ベイルアウトがあるとはいえ常に死や危険と隣り合わせのボーダーだからこそ、皆それぞれの美学がありそうですよね。


初恋は何度でも繰り返すで賞
『冷蔵庫でおやすみ/白布賢二郎』
ヨスミさんのセンスが光りまくっている夏とバレンタインのお話。「横顔。見たことのある横顔は、私の腐り果てた心まで、思い出させた。……本当なら言わなくてよかったのに。言ってしまえば、私は陽炎に目が眩んだのだ。」ここであえて「腐り果てた心」というフレーズを引っ張ってこれるのが天才だなと思います。遠近には逆立ちしてもいくら頭を捻っても出せないので素晴らしい。何を食べて何を考えて何を読んだらこんなフレーズが思いつくんだろうね?(2回目)
あとここも好き。「ノンフレームで見る賢くんはやっぱり、腐っても溶けても解けても恋心は散らされても。初恋の人だった。」初恋をテーマにした話にもれなく弱いなと自分でも思いますね。例え一度は上手くいかなくても何度だってやり直せる若さがまだ私と白布くんにはあるっていうことを思い出させてもらえたような心地がします。本当にありがとうございます(合掌)


その光が目に眩しいで賞
『ほら、尽きる星だね/狗巻棘』
「星みたいなこの人の髪ならいつまでも見ていれる気がする。」この一文でもう好きなのが確定している、約束された夢小説です。狗巻の頭見て星ってフレーズ思いつくか?頭の中どうなってるんだろう?ってついつい宇宙猫顔になってしまう。この感性がたまらないですね。好きな女の子に自分の言いたい意図が伝わらずに絶望的な声で「明太子……」って言う狗巻パイセンが良すぎる。めっちゃ可愛い。
終盤あたりの「いっそのこと先輩に『すき』と言われて呪われてもいいのに、先輩は呪言を使わない。いつでも手を握っておにぎりの具に愛を乗せてくる。どうあがいてもわたしたちの道は分かれてしまうのに、手は繋いだまま。真っ逆さまに落ちては止まれないまま。」がめちゃくちゃ好きです。高専の高い建屋で天体観測しようっていう発想ひっくるめて大好きなお話。一見の価値ありです。


おれもきみもきっとずるい人間で賞
『グンナイ・ブルース/迅悠一』
約束を守ることではなく約束すること自体に意味があるというお話。「おれはさぁ、未来が視えることを嘆いてなんか無い。持ってるもの、環境、人、なんだって使うよ」って言う最高のずるい迅悠一がいます。
迅悠一、未来が視えるっていう作中屈指のチート属性が故に動かしづらいなと思うときがあるんですが、そんな動かしづらさを微塵も感じさせないこの夢小説に対する嗅覚が素晴らしいなとしみじみ感じる。キャラクターに対する解像度が高い。
中盤にある「こういうとき、相手がレイジさんならきっと〜正直なはなし、正義とやらは知らないが、おれは最良の未来に手を伸ばさないなんて選択肢を選ばない。」の流れが完璧すぎて大好きです。どうやったらこういう文が書けるんだろう。書いてるところを覗いてみたいなと切に思います。最後の終わり方まで素晴らしい。こういう作品と出会える度にワールドトリガーを好きになってよかったなと思います。


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