勝手に書評を書くコーナー
△夢の真髄がここにあるで賞
『永久凍土の火の海／犬飼澄晴、辻新之助』
この方の△夢は好きなのありすぎて選べないなと思ってたんですがあえて一作を挙げるならこちら。辻→ヒロイン⇄犬飼の△夢。片想いを拗らせる辻新之助が拝めます。
淡々としつつもどこか親近感があり、されども強い説得力のある高梨さんの文章で展開される△夢はどれもこれも本当に削るところがないなっていうくらいの完成度の高さなのですが、序盤の辻ちゃんの独白の「歯噛みしたくなる。」の一文で一気に好き！！！ってなりました。辻新之助、君が私のナンバーワンだ……って気持ちになりますが辻ちゃんがナンバーワンになりたい人は私であって私ではないんですよね(当たり前体操)
あとは「ふたりの声が耳に入るたびに、心の表面が勢い良くやすりをかけられたようにざらつく〜今となっては、前向きな未来の実現を望むだけ無駄なのだが。」ここの表現がめちゃくちゃ好きです。好きな人に好きな人や付き合っている人がいる恋は楽しいばかりではない(だけど止めることも出来ない)という△夢の永遠のテーマが凝縮されていて本当に素晴らしいのでとにもかくにもご一読することをオススメします。
目の付け所がシャープで賞
『炎のほころび／荒船哲次』
WTを履修した夢女は全員読んだ方がいい。押し倒されたり部屋に誘われたりと事前の話はよくありますが完全に事後の話をここまで丁寧に描いている夢小説は中々見ないなと思います。リアルすぎてこっちまでドキドキしてしまう。実は私は高校生で荒船先輩と付き合っているのでは？と存在しない記憶が目覚めてしまいそうになる。また犬飼が良い仕事をしてるんですよね。カゲでもゾエさんでも鋼くんでもなく犬飼っていうチョイスも良い。
設定、キャラクター同士の掛け合い、荒船が勝手に一人でモヤモヤしているところの描写、良い仕事をする犬飼、どこをとっても最高ですが特に終わりの「慣れも余裕もなければ、もはや優しくもない。何しろ俺は、廊下を駆けて近づいてくる忙しない足音に冷や水を浴びせられるまで、身を焼く高熱の侵略に打ち勝てず、名前を解放してやれなかったのだから。」ここがめちゃくちゃ高梨さんの文章だ……！って思って勝手に大興奮してしまいます。何でこんなのが書けるんでしょうね。切り口がオシャレで良すぎる。実は頭の中に荒船が住んでるのかもしれない。
これを読むために年を重ねる価値があるで賞
『yet／犬飼澄晴(R18)』
R18夢なのでオススメするか迷ったのですが大好きなのでめでたく(遠近が独断と偏見で選ぶ)ベストオブ夢小説選抜トップ5入りしました。R18を読めるようになったら真っ先に読んでほしいのがこのお話です。皆早く18歳になってね。女の子にいいようにされる犬飼澄晴18歳(理想の権化)がここにいるので……。
全部好きなんですが特に「お願いだから〜」の台詞がめちゃくちゃ好きです。好きすぎて読んでる途中で一回画面閉じてもう一回開いて読みました。何度読んでも最高でした。
設定も構成もめちゃくちゃ好みなんですが、特に「もともと、犬飼は何をやっても小器用にこなせてしまうタイプだった。授業を適当に聞き流しているだけでもテストはそれなりの点数を取れていたし、ボーダーに入隊するなりすぐにトリガーという名の未知の武器の扱いにも慣れた。だから、今夜ももっと上手くできると思っていた。」からの「今度こそ、上手くやれるだろうか。」最後のこの一文。伏線回収の鮮やかさにため息が出ますね！夢小説を書くのがめちゃくちゃ上手い。
俺は出来るで賞
『ひと夜の美しくありふれた犯行／風間蒼也』
大好きの一言に尽きる。本当にこの方のWT夢は外れがない。無料で読んでいいんですか？ってレベル。中でも一二を争うくらいで遠近が好きなのがこちらの風間さんの短編です。何が好きって「俺はできるぞ」この台詞〜〜〜！(言葉にならない)
いやもう本当に好きです。ここぞという台詞なのに全然関係ないタイミングでしれっと重大発表してくる風間さん、愛しかない。私も諏訪さんと風間さんと居酒屋でぐだぐだ喋りたい。
あと「俺が連絡するまで戻って来るなとあいつには伝えておいた」に対する「まさかそこまで根回しをしていたなんて。用意周到な計画的犯行ではないか！」の反応が可愛くて好きです。どう考えても風間さんに計画的に落とされたいよね。あと「たった一回の、恋人でもない男とのキスで、死すものあれば、生まれるものあり。」の書き方もめちゃくちゃ好き。全部好きじゃんって思った貴方、その通り大正解でございます。
夢小説の可能性は無限大で賞
『百億光年先でもまぶしい／狗巻棘』
呪0巻を読んでからというもの狗巻パイセンが好きなんですが、語彙がおにぎりの具しかないってところでこりゃもう(夢小説的に)お手上げだなって思ってたときに飛び込んできた一筋の光がこの小説。こんぶ高菜すじこツナマヨしゃけおかかで夢小説書けるのが凄い。しかもちゃんと成立しているし何ならめちゃくちゃ面白い。
「語彙が限られた棘とのコミュニケーションは、いつだってなぞなぞめいている。」いや本間それなって感じです。それをちゃんと夢小説へ昇華出来ているのが素晴らしい。多才すぎる。頭の中どうなってるのか覗いてみたい。
やりとりが可愛くて全部の台詞が好きですが、「苦しいのに、愛おしい。きらめきに満ちた今夜のことを、この先、わたしは何度だって思い出すだろう。つまずいたり、先走ったり、ぶつかり合ったり、間違えたりしながらも続けていく日々の中で。」この締め方が鮮やかすぎてスタンディングオベーションしてしまう勢いで好きです。素敵なお話を公開してくださり本当にありがとうございます。確かにこれで救われる命がありますのでどうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
