かわいいあのこ
風間蒼也の辞書に「かわいい」という文字はない。ずっとそう思い込んでいた。何故ならこれまでの私たちのそれなりに長い付き合いの中で、あの男がそうした類の言葉を発した場面を見たことがないからだ。
冷静沈着を絵に描いたような男だった。いついかなるときも表情を崩さず、たとえ近界民がいきなり目の前に現れようと動揺一つせず果敢に切り込んでいって、確実に手柄を自分の物にする。たとえ上層部との会話であっても淀みなく的確に受け答えが出来て、その一切に無駄がない。寝坊も遅刻もしているところは見たことがないし、どんなときに顔を合わせても、あの男の赤い瞳は常に落ち着き払っている。 おまけに好きなものは自己鍛錬で、ボーダーでも個人総合3位の実力者。隙がなさすぎるのもいい加減にしてほしい。
そんな男であるからして、たとえ交際している相手であろうと彼に対して甘い言葉や態度を期待したことはなかった。あの風間が、ずば抜けて優秀なわけでも希少なサイドエフェクトを持つわけでもない私を、特に文句も言わずに側に置いておいてくれているだけでも十分だ。それ以上は望もうとも思わない。強がりや虚勢の一切を抜きにして、心からそう思っていた。そう思えていた。風間が厳しいのは自分にも他人にも同じことで、むしろ恋人だからといって特別扱いはしない――そんなところが好きなのだ、と。ついこの間まで本当にそう思っていた。
けれど見てしまったのだ。あの風間の口から「かわいい」という言葉が飛び出した瞬間を。
しかも、恋人であるはずの私以外の人物に向かって。
とある飲み会が開かれた日のことだ。玉狛の方に用事があるという木崎を除いて、風間と諏訪と雷蔵と四人で本部近くの居酒屋に集まった。飲み会はいたっていつも通りに進んでいき、運ばれてきたそれぞれのグラスやジョッキで乾杯を済ませ、諏訪がメニュー表を眺めながら適当にいくつか頼んだスピードつまみを順番に箸でつつきながら先日行われたランク戦の感想や改善点なんかを言い合って、そうこうしているうちに風間が潰れた。ついこの間今シーズンのランク戦の初戦を終えたばかりの諏訪隊の話をしているうちからどんどん目が据わっていって、次第に受け答えも覚束なくなり、ついには隣に座る雷蔵の腿を枕にして寝始めてしまったのだ。
そこまではまあ、いつも通りだった。雷蔵も諏訪も私も、聞こえ始めた寝息を特に気に留めず会話を続けていたくらいにはよくあることだった。普段と違ったのはここからだ。
雷蔵の冗談に諏訪がツッコミを入れた折だったか、私が一際大きな笑い声を上げたときだったか。何かの拍子にむくりと起き上がった風間が、「お、起きた?」と言いながら顔を覗き込んだ雷蔵を見るなり「……かわいいな」と目を細めて言ったのだ。予想だにしていなかった一言に衝撃のあまり固まる私、何を言われたのか理解出来ず呆ける雷蔵、店の外に放り出されるのではと心配になるくらいの大声でゲラゲラと笑い転げる諏訪、その一切を気に留める事なくまたすやすやと眠りについた風間――端的にいって地獄絵図だった。
酒に酔った風間が、時に普段の彼からは想像もつかない姿となることは知っている。どこにも隙がないように見える彼が、隙だらけになる瞬間がある。
実際、今も風間は私の正面に座る木崎の隣でぐでんぐでんに酔っ払って机に突っ伏した状態で寝こけていた。今日は開始三十分ももたなかった。この前の飲み会でもは飲み放題の時間の半分も飲んでいなかったように思う。それぐらい酒に弱いのだ、風間という男は。だから面白がって諏訪や雷蔵はやれ飲みの席を設ける度に彼に飲め飲めと言うし、風間も風間で拒否すればいいものを毎度誘いに乗るものだから、すぐに酔わされてしまう。そしてポストと戦ったり、訓練室でもないところでカメレオンを発動しようとしたり、挙げ句の果てには同性の友人に向かって「かわいい」なんて言ったりするのだ。
普段の彼を知る人間の中には、その様子を見て微笑ましいと言う人もいるだろう。私だってそう思っていた。けれど今回ばかりはそれが憎らしくて仕方ない。
だって、よりにもよってなんで雷蔵なんかに。
憎い憎いと思うあまり表情に出てしまっていたらしい。至って平常心で酒を呷っているつもりが、向かい側に座っている雷蔵に「顔怖いんだけど」と言われてしまった。無心で口元へと運んでいたグラスをテーブルに置くと思ったよりも大きくドンッという音が辺りに鳴り響き、三人分の目線がこちらへ向けられる。
「許せない……」
「何が?」
「雷蔵という男の存在が」
「おめーあんまこえーこと言うなよ」
「だって……納得できないでしょ。あんたより私の方が絶対毎日かわいくしてる自信あるのに」
「まあ、あれじゃん。かわいいとかかわいくないとかって人それぞれだから」
「勝ち誇った顔しないでくれる? 普通にむかつくんだけど」
大体雷蔵の一体どこがかわいいんだ。ちょっと丸くて、もちもちしていて、気だるげな目がどことなく猫に似ていて、お腹を触るとふにふにして気持ちいいだけじゃないか。
次から次へとフライドポテトを口元へ運んでいる雷蔵を睨みつけながら「何でよりにもよって雷蔵なんかに……」と呟くと、それを聞いた諏訪が「おめーも太ってみりゃいいんじゃねーの」と面倒臭そうに言った。それに雷蔵が「試しにずっとトリオン体で生活してみたら」と続ける。
「適当なことばっか言わないでよ」
私はそういうことを言っているんじゃないというのに。真面目に聞くつもりが一切なさそうな二人に抗議の目線を向けながら言う。事の経緯を知らない木崎は今回は傍観者に徹するつもりのようで、我関せずといった様子でジョッキからビールを流し込んでいた。まだ文句を言い足りない、という気持ちを込めて睨みつけると、雷蔵と諏訪は意味ありげに顔を見合わせる。
「んなこと言われても……なぁ」
「惚気にしか聞こえないし」
「惚気じゃないし。恨み言だし」
「だから顔怖いって」
「つーかおめー、それそいつに言わねえと意味ねーだろ」
そう言って諏訪が示した先の風間は、時折唸り声のようなものを上げたり身じろぎしたりはするものの、まだ覚醒する気配はない。
「こんなの本人に言えるわけないでしょ」
「惚気だもんな」
「違う。違うけど――」
一体どう言えばいいというのだ。あの風間に「かわいい」と言ってもらいたいなんて。それも、これまでそんな素振りを一切見せてこなかった女が、よりにもよって雷蔵に嫉妬しているなんて。とてもじゃないが言えたものじゃない。
「別に強要してまで言われたいわけじゃないんだよね」
「……めんどくせー」
もうこの話はおしまいだ、とでも言うように諏訪がポケットから取り出したタバコを一本咥える。
本当はまだまだ愚痴を言いたい気分だったけれど、それからすぐに風間が目を覚ましたので本当にこの話はそれきりおしまいになってしまった。完全なる不完全燃焼だ。もやもやを抱えたままテーブルを挟んだ向かい側、雷蔵の隣に座っている風間を見ると、いたっていつも通りのすまし顔がそこにあって、尚更腹が立った。
繰り返すようだけれど、私は決して強要したいわけじゃない。風間が自らの意思で発した言葉でないと意味がないのだ。今までそんな言葉がもらえなくとも気にもしていなかった。けれどそれは風間の中にそうした類の言葉がないと思っていたからで、だからこそ自発的に言われた雷蔵が許せないのだ。たとえそれが寝ぼけた男の戯言だったとしても。
◆
諏訪の言葉を借りるわけではないけれど、いくら私が恨み言を口にしようとも直接本人に言わない限りはそれが風間に伝わるはずもなく、憎い憎いと言いながらも風間と雷蔵を含む同期四人とは定期的に飲み会を続けていて、そうこうしている間に風間隊が遠征へと出発してしまい、私の心には束の間の平穏が訪れた。そしてしばらく遠征に行っていた風間隊が戻ってくるというので、久しぶりに同期みんなで飲み会が開かれることになり馴染みの居酒屋へ向かうと、そこには既に風間が一人でテーブルに座っていた。
「あの三人は? まだ来てないの?」
「今日は俺とおまえの二人だけだ」
「え」
「不服か?」
「いや別に」
何とも思っていない風を装うのに苦労した。顔を合わせていない期間が長かったせいか、風間の顔を見るだけで少し緊張してしまう。緊張気味の私の上擦った声を、がやがやとした居酒屋の喧騒がいい具合に隠してくれた。
おしぼりと水の入ったグラスだけが載っているテーブルにメニューを広げて、二人で覗き込む。こんなことをしなくとも大抵頼むメニューは決まっているのだけれど、いつも勝手にメニューを頼んでくれる諏訪がいない分、あれもこれもと目移りしてしまう。
クイックメニューを二、三品と最初のドリンクの注文を済ませたところで店員が奥の方へと引っ込んで、私と風間の間には束の間の静寂が訪れた。
今日は諏訪も木崎も雷蔵もいない。私と風間の二人だけだ。こうしてじっくりと風間の顔を正面から見るのはいつぶりだろう。大抵いつも他の誰かと一緒にいるから、風間と二人きりで話すのも久しぶりだ。今この場には私とこの男の二人しかいないと思うと、一度落ち着いたはずの緊張がまたぶり返してきそうになる。おかしいなぁ、曲がりなりにも私と風間は恋人の間柄で、こんな風に気を張る必要なんて全くないはずなのに。風間といると上手く取り繕うことさえ出来ずに格好悪いところばかりを見せてしまう。
いつもはどんな風に風間と話してたんだっけ。こうして居酒屋に集まるときに話題に上るのはくだらないことばかりで、記憶を辿ってみようにも何一つとしてこの場に――恋人とのデートの場にふさわしい話題は見つからなかった。世の中のカップルは、こういうとき一体どんな話をしてるのだろう。私から告白して、その告白を受け入れてもらったのは確かなはずだけれど、長年かけて築き上げた間柄はそうすぐにも変わるものでもなく、如何せん私たちの間には甘いやりとりや触れ合いというものが足りなかった。
そうして考えている間にも、この見覚えのある居酒屋の光景から思い出されるのは風間がいつになく優しい表情で雷蔵に向かって「かわいい」と言ったあのときの衝撃ばかりだ。そこまで考えて、ふと思い至る。しつこいようだけれど、今日この場には私と風間以外に誰もいない。
なら、今日が最初で最後のチャンスなんじゃないか、と。
「ねえ風間」
運ばれてきた焼き鳥に早速手をつけている風間に向かって呼びかける。もしかしたら、誘導できるかもしれない。そう思ったのだ。
「何か私に言いたいこととかさ、ないの?」
身を乗り出して聞くと、風間は赤い瞳でこちらをじっと見据えて少し考えるような素振りを見せた。
「――この前のランク戦で」
え、ランク戦? 続けられた言葉に内心がっかりした気持ちを抱えながら風間の講釈に耳を傾ける。
「おまえが囮になって相手を挟み撃ちにする作戦自体は良かったが、初動が大きすぎる。あれじゃ脇から撃ってくれと言っているようなものだな」
「……はーい」
誘導は失敗に終わった。風間のことだ。元から大して期待はしていないけれど、それでも、あわよくばと思っていたのに。
二人きりであることを期待はしていなかったけれど、久しぶりに飲みの場に顔を出すというから一番お気に入りの服を着て、念入りに髪を巻いて、昼間に行ったネイルサロンで整えたばかりの爪もさりげなく見えるようにしたりしていたのに、風間は何一つとして頓着する様子がない。やはり雷蔵のように明らかに見た目に変化を起こすしかないのだろうか。金髪にしてみたりしたらさすがの風間でも何か一言だけでも言ってくれたりするのかなぁ。……もしそれさえもリアクションがなかったらもうどうすればいいんだろう。一日中トリオン体で生活してみるという案が現実味を帯び始めたところで、風間がこちらを見て言った。
「何か落ち込むことでもあったのか」
あんたのことだとはとてもじゃないが言えなかった。
「……ううん、別に。上手くいかないもんだなーと思っただけ」
「ランク戦はともかく、この間の任務はよくやっていたと思うが」
「見てたの?」
「俺の隊の近くにいただろう」
この間の任務と言ったけれど、私とこの男が一緒の任務に当たったのは風間隊が遠征に行く前だから、一ヶ月以上は前のことだ。
「よく覚えてるね」
「視界に入ってくるからな」
さすがA級3位部隊の隊長ともなれば、自部隊以外の戦況を把握するのにも余念がない。その洞察力をあとほんの少しだけでもいいから恋人の私に向けてくれればいいのにと思わないこともないけれど、この男のそういうところに惚れたのだからもうどうしようもないことだった。
はぁ、と溜め息をつく。
「どうした」
「別に。……風間に言いたいことあったけど忘れちゃった」
「そうか。俺はまだおまえに言いたいことがあるぞ」
そう言った風間が静かにこちらを見据える。途端に緊張が走り強張る身体を誤魔化すようにテーブルの上で腕を組み風間の方へ視線を返すと、目の前の切れ長の赤い瞳には私の顔しか映っておらずドキドキとした胸の鼓動が高まっていくのを感じた。
声が裏返ってしまわないように細心の注意を払いながら、けれど何でもないようにして風間に向かって声をかける。
「なっ……なに、言いたいことって。さっきのランク戦の話の続き?」
「違う」
「じゃあ何のこと?」
こうして改まって切り出されると、何か悪いことでもあったのではないかという考えが頭を掠める。実は私の知らないところでボーダー上層部だけが知っている秘密の計画が進んでいるとか、その関係でしばらく距離を置かないといけなくなったとか、見た目には分からないけれど遠征で何かしらのダメージを負ってしまったとか、はたまた付き合っていても特に友達のときと変わらないから別れよう、とか……。
ぐるぐると回っていく私の思考を遮るようにして、風間が口を開いた。
「雷蔵」
「雷蔵?」
「あいつのことはそう呼んでるだろ」
「うん。え? だって……雷蔵は雷蔵じゃん」
「そうだな」
「でしょ」
予想していなかった名前に、思わず素っ頓狂な声が出てしまった。けれど、それを誤魔化すように笑ってみても、風間は笑ってくれなかった。赤い瞳が静かに光っている。
「じゃあ、俺のことは何と呼んでる」
「……風間」
沈黙が痛い。風間が発する次の言葉を待つまでもなく、この男の言いたいことが分かってしまった。分かってしまうのが嫌だった。どうか久しぶりの二人きりの空間というこのシチュエーションに頭がのぼせ上がった私の勘違いであれと願ってみても、風間が続ける言葉一つ一つが鮮明に、嫌というほどはっきりと聞こえてくる。
「雷蔵は雷蔵だと言ったな」
「うん」
「俺は違うのか」
「えーっと……」
そう言われてしまうと困る。雷蔵は雷蔵、風間は風間。みんなそう呼んでいるから、同じように私も彼らのことをそう呼んでいる。それだけの話だ。もしも雷蔵がボーダーの他の隊員たちから「寺島」と呼ばれていたのなら、私だってあの男のことをそう呼んでいただろう。特別な間柄だからとか、親しみを込めているからとか、そうした理由では決してない。決してないのに、こうして槍玉に挙げられてしまうとは困ったものだ。
「でもさぁ」
そう切り出して、なんとか話を逸らせないかと画策する。
「恥ずかしくない? 今までそういう感じじゃなかったのに、なんていうかこう、いきなり彼女面してるっていうか……」
「おまえは俺の彼女じゃないのか?」
「そうだけど」
「じゃあ何も問題ないだろう」
そうだ、何も問題ない。むしろ恋人同士なのだから、そうした甘いやりとりの一つや二つ、あって然るべきなのだ。それは分かっている。分かってはいるけれど、このどうにも居ても立ってもいられなくなるような気恥ずかしさはどうしたらいいのだろう。そもそも風間って、そういうこと気にするようなタイプだったんだ。
新たに知る恋人の一面に喜んでもいられない。これまでの話から察するに、風間は私に名前で呼んでほしいのだ。『風間』ではなく『蒼也』と、そう呼んでほしがっている。信じられない話だけれど、風間の表情は至って真剣で、煙に巻こうにもこれ以上は上手く話を逸らせそうにもない。
――だけど、おいそれと風間の要望に従う気にはなれなかった。そっちが雷蔵を引き合いに出してくるのなら、こっちにだって言いたいことはある。
「……そういう自分はどうなわけ」
思った以上に低い声が出て自分でも驚いた。風間は眉ひとつ動かさずにじっとこちらを見ている。その姿を見ていると、私一人だけが感情的になってバカみたいだと思わずにはいられない。けれど、一度口に出してしまったものは止められなかった。
「私のこと全然褒めたりしないじゃん」
「この間の任務はよくやったと言わなかったか?」
「そうじゃなくて。かわいいとか、好きとか、……そういうの」
ようやく言い切った。風間の顔はもう見られなかった。
今日の風間はよく喋る。いつもは聞き役に回っている印象の方が強い風間が、自分のことはあまり積極的に話さない風間が、今はどんなことでも答えてくれるのではないか、と思えてしまうほどによく喋る。けれど私の言葉を最後にして、先程までの話しぶりがまるで嘘のように風間は押し黙ってしまった。
「ごめん、……変なこと言った。忘れて」
だめだ、これ以上はもう沈黙に耐えきれない。誤魔化すように早口で言った後、ほとんど泡だけになっているビールのグラスを掴んで一気に飲み干した。グラスの底の分厚いガラス越しに風間を見ると、彼は微動だにせずこちらをずっと眺めている。そんな風に見られていると、なかなかグラスを下げられなくて困った。
不意に名前を呼びかけられる。風間の赤い瞳は変わらずまっすぐにこちらを見ていて、やっとグラスをテーブルに置いた私と目が合ったことを確認してから目を細めると、一言「かわいいな」と言った。それも、雷蔵に言ったときよりもうんと優しい声色で。
「……いっ、今言う!? それ」
「思ったことを口にしただけだ」
「それにしたってタイミングってもんがあるでしょ……!」
切り札にするつもりだった。風間だって、私のことかわいいって言ってくれないじゃん。それでおあいこにしようと思っていたのに。こんな風にされては、私も降参するしかなくなってしまう。
「俺は言ったぞ」
「ちょっと……! 急かさないでよ」
今頃になってアルコールが回り出したのか、一気に顔に熱が集まっていく。それを変わらずじっと眺めている風間の顔は、心なしかいつもより少し楽しそうだ。
――もしも今、この男がさっき望んだように名前で呼んでやったのなら、この澄ましたような表情をほんの少しだけでも崩すことが出来るのだろうか。
追加で注文したビールが届くのを待ちながら、そんなことを考える。頭の中はもう、いつ爆弾を打ち込んでやろうかという気持ちでいっぱいで、いてもたってもいられなかった。
お望み通り呼んでやったのなら、風間は、どんな顔をするのだろう。満足げな顔? それとも、「やっと呼んだか」なんて言って、お得意の偉そうな口ぶりで話すのかもしれない。あわよくば赤面するところが見たいところだけれど、それが期待できるかは分からない。
それでも、この店を出る頃には私たち二人の関係がもう少し甘いものになっていますようにと、願わずにはいられなかった。
お題:「かわいい」という風間さん
しれっとした顔で爆弾を打ち込む男であってほしいと思っています