Machine-gun Talk! 03

いつものように朝練をしようと思って体育館に行ってみたらキュッキュッという聞きなれたバッシュの音がした。珍しく先客がいるのかと思い興味本位で覗いてみるとそこには昨日会ったばかりのマシンガン女子がいて、内心ものすごく驚いた。

「あれ、日向くんおはよう」
「……はよ、何でここにいんの」
「何って朝練だよ」
「ここ俺の場所なんだけど」
「体育館は誰のものでもないんだけど」

ごもっともだ。ただ、今まで俺より早く朝練してるやつなんて見なかったから何だか自分だけの秘密の場所を奪われたような気がしてどうも釈然としない。ふと足元に落とした目線が捉えたのバスケットシューズは所々が擦り切れていて相当な年季が入っているもののように思えた。

「まあそんなとこ突っ立ってないで入ってよ日向くん一緒に練習しよ、練習相手ほしかったんだー」

楽しそうに笑う顔を見ていたらそれ以上くだらないやりとりをするのも面倒くさくなってきたからとりあえずが投げてよこしたボールを受け取ってリングへと放り投げる。ボールがネットに擦れる小気味いい音と隣りから聞こえる拍手だけが静かな体育館に響いた。

「上手いなーさすがクラッチシューターなだけのことあるね」
「……知ってんのか」

顔にはあまり出さないもののちょっと驚いた、何しろ彼女の印象は相手の事情も態勢も気にせずにがんがん喋りまくるやつ、だったからだ。

「知ってる。男バスの練習結構見てたから」
「ほんとかよ」
「何なら皆のプレーの特徴言ってあげようか」
「いや、遠慮しとく」
「何で」
「喋ると止まんなさそうだから」
「清々しいくらい図星だわ」
「わり、俺シュート練習したいんだけど」
「どうぞ、あたしはもう上がるね」

あーいい汗かいたなー、とボールを片手に抱えながらタオルで汗を拭う後ろ姿が案外小さくて頼りなさそうに見えて、思わず声をかけてしまった。

「淋しくなんねーの」
「は?」

人がせっかく心配したっつうのに「は?」とは何だ。

「バスケってのはチームでプレイするもんだろ」
「うん、そうだね」
「でもあんたはそれを一人でやろうとしてる」
「……うん」
「空しくなったりしねーの」
「するよ、出来たら仲間がほしい」

でもあたしはバスケが好きなだけで日向くんたちみたいに上手いわけじゃないからこのまんまでいいの、と言いながら彼女が投げたボールは綺麗な弧を描いてネットに吸い込まれていった。

「じゃあまたね日向くん今度はワンオンワンでも出来るといいね、でもあたしオフェンスもディフェンスもそんなに得意じゃないから日向くんの相手になんないかもしんないけど、まあお手柔らかによろしく」

あんただってそんなに下手じゃないと思うんだけど。

「……オフェンスとディフェンスとついでにシュート教えてやるからあんたマネージャーやれば」

不意に口をついて出た言葉に驚いたのは彼女だけじゃなくて俺も同じだった。何言ってんだ俺。

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