Machine-gun Talk! 105

こっちが木吉くん主体で攻めていくように、海常は笠松さん主体で攻めてくるつもりらしい。海常はアイソレーションであからさまに笠松さんが動けるスペースを作ってる。ってことは、ワンオンワンで笠松さんの相手をするのは同じポイントガードの伊月くんだ。

笠松さんが伊月くんを抜いた。読みは合ってたのに、それでも追いつけないなんて。速い。速すぎる。この大会、キセキの世代とか無冠の五将みたいなスーパープレー出しまくる人たちばっかが集まってるから埋もれがちだけど、敵に回すと怖いのって笠松さんとか氷室さんみたいな基礎のプレーがしっかりしてる人なんだよね。気を衒ってないスタンダードなプレイをする分、技術の差が出やすいというか、

「要は現状ウチでお前が一番ナメられてる」
「……ああ、分かってる」

ちょ、キャプテン言いたいことは分かるけど言い方!もうちょっと言い方考えて!

「心配しなくても大丈夫よ。伊月くんはあれぐらいでへこたれたりしないわ」
「うん、そりゃもちろん分かってるんだけど……って、ちょっと監督あたしの心読まないでよ」
「あんたが分かりやすすぎるのよ」

なんかそんな感じのこと前にも言われたような気がする!それにしたって皆あたしの心読みすぎなんじゃない?って思うんだけど。伊月くんや黒子くんのポーカーフェイスをちょっとぐらいは見習った方がいいんだろうか。

ちょっと話は変わるけど、頑固者揃いの誠凛の中でも伊月くんって飛び抜けて頑固だと思うんだよね。一回やるって決めたら絶対やめないし。本当にテコでも動かなくなる。おまけに負けず嫌いで、試合前日だってのに一番遅くまでカゲトラさんから教わった必殺技の練習コガくんや水戸部くんたちとしてたりとか。いつも涼しい顔してるくせに、負けず嫌いっぷりでいったら黒子くんと良い勝負だと思う。でも、そんな伊月くんだからこそ、どれだけ難しい技でもきっと完成させてくれるって信じたくなっちゃうんだ。

笠松さんがフルドライブをかけた。……今だ!決めちゃえ伊月くん!

トップギアで抜きにかかった笠松さんを、伊月くんの爪が捕らえた。コートを俯瞰で見ることが出来るイーグルアイと、後ろ向きのまま出すことによって振り返る分のスピードを全部乗せてボールを狙い撃つ、伊月くんだけの必殺技。その名もイーグルスピアだ。

伊月くんがバックチップで弾いたボールが日向くんの手に収まったのを見て、ベンチからコガくんたちと一緒になって声援を送る。直前までピンポイントでボール狙うの苦戦してたのに、ここに来て完成させてくるなんて伊月くんの負けず嫌いさって相当だよね。まあでも、それも当たり前か。みんな色んな想いを懸けてここまで、ウィンターカップ準決勝までやってきたんだ。いくら海常が全国でもトップクラスのチームでも、ナメられるような選手は誠凛には一人もいない。

笠松さんと対峙する伊月くんが満足そうに口角を上げたのが目に入った。

「カッとなってナイスカット!」
「伊月ダマレ」

…………あーあ、台無し。

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