Machine-gun Talk! 111

ウィンターカップ準決勝が終わった。明日の17時半からついに男子の部のファイナルが始まる。それは、キセキの世代のキャプテン赤司くんと黒子くん火神くんの直接対決がとうとう実現することを意味していた。

「うおおー勝ったあー!」
「祝勝会しようよ!祝勝会!」
「明日決勝なのに今日祝勝会やんの?気早くない?」
「そうだよ、楽しみは最後まで取っておいた方が良くないか?」
「ごめんもう正直準決勝の時点で嬉しすぎていてもたってもいられないんだけど、今日からこれじゃあたし明日勝ったとき死んじゃうかもしれないから死なないうちに祝勝会しときたいなって思ってさ」
「大袈裟だな」
「そんなこと言って日向くんだって顔めちゃくちゃ緩んでるじゃん!」

緩みっぱなしのキャプテンを監督がハリセンで叩いた。ごめんごめん、監督の言う通りこれで終わりじゃなくてちゃんとまだ明日の決勝残ってるって分かってるから、気引き締めていかなきゃいけないよね。日本一まであと一つって、改めて聞くと凄いなぁ。本当にここまで自分たちの足でやってきたんだ。あとはもう、全速力で頂上まで駆け上がるしかない。

「海常はもちろん今まで戦ってきたチームの分まで勝たなきゃならないんだから!」と言った監督の言葉に気合を入れ直した。明日の試合夕方からだからギリギリまで対策練れそうだし、今日のところはこれで帰っても良さそうだ。試合終わってホッとしたらお腹空いてきちゃったな。どうしよ、家に着くまでちょっと時間あるし、マジバで何か買ってから帰ろうか。黒子くんと火神くんは試合でへとへとだろうし、後でコガくんと水戸部くんでも誘ってみよっと。

明日の試合に向けて気合を入れ直した後、解散しようとした間際で火神くんが「リングなくした……!」と言って探しに行ってしまったのを受けて予定を変更して皆で火神くんのリングを捜索することになった。ロッカーにもないし、さっきまで喋ってた廊下にもないし、どこやっちゃったんだろ。あれだけ大事にしてたのに失くすって、氷室さんに聞かれたら怒られちゃうよ。


結局火神くんのリングは緑間くんが拾って持ってきてくれたらしい。緑間くんまだ会場に残ってたんだ。あたしたちの試合見てたってことなのかな。そりゃそうか。海常か誠凛、準決勝で負けた方が3位決定戦で秀徳とやる予定になってるんだもんね。どっちと戦うことになるか気になるのも当然だ。

火神くんと一緒になって戻ってきた黒子くんが浮かない顔をしているのを見て、リング探してる間に何があったんだろうと心配になった。さっきまで人生初のブザービーター決めた喜びを噛み締めてたのに、どうしちゃったんだろう。もしかして緑間くんに何か言われた?最近の緑間くん最初の頃に比べたらめちゃくちゃ丸くなったと思ったんだけど、やっぱり黒子くんとは相性悪い感じ?決勝前に後輩にそんな顔されると不安になっちゃうんだけど、うーん、どうしたものか。ぐるぐる考えているうちに、少し深刻な表情をした黒子くんが「皆さんにお話があるんですけど、この後時間ありますか」と口を開いた。

「決勝前にお話したいと思います。……ボクたちの、帝光の過去を」

えっ。帝光の過去って、気になって何回か聞いてみたことはあったけどいっつもはぐらされてたあの帝光の?黒子くんが話したくなさそうだったからそれ以上追及してこなかったけど、自分から話そうとしてくれる日が来るなんて。どうしちゃったんだろう。このタイミングで話してくれるってことは、赤司くんに関係ある話ってことなのかな。そういえば、赤司くんって『黒子くんの力を見出した』とか言っていたような……。その話が聞けるってこと?気になる。めちゃくちゃ気になる。時間なんて気にせずにいくらでも気が済むまで話してほしい。あ、でもお腹空いちゃったから長くなるなら腹ごしらえだけはさせてほしいかも。

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