Machine-gun Talk! 12

インターハイ予選も四回戦ともなると会場は結構大きな体育館となるらしい。今日はコートを2つ使える広さがあるからあたしたちが試合やってる隣でシード校が試合をやるそうで。しかも日向くんによると東京都の代表三校はここ十年の間正邦と秀徳と泉真館だけで独占状態なんだそうだ。ちなみに去年の誠凛は四位ね。その東京都不動の三大王者の中でも今日は秀徳高校の試合が見られるらしい。確か秀徳高校って緑間くんと高尾がいるところじゃなかったっけな。

四回戦の相手は何故か火神くんと黒子くん相手に腰引けっぱなしであっという間に試合が終了してしまった。おかげでいつもはお茶要員なあたしもあんまり活躍できず。これはこれで寂しい気もする。

そんなことを考えてたら一気に会場がどよめきだした。颯爽と歩いてくるあの集団は…秀徳だ。高尾くんと緑間くんがいる。ここからじゃ色んな人が邪魔でよく見えない。緑間くんとかあのキャプテンらしき人とかは周りより頭一つ出てるからちゃんと見えるけどね!

……まさかそれはないだろうと思いつつも緑間くんの手あたりをじっと見つめてみた。あ、いた!やっぱりいた!くまさんがいた!広げられた掌の上にちょこんとくまさんが!ウサギの次はくまかよ!いやこれといって特には何も支障ないから別にいいんだけど。むしろ可愛いとすら感じられるんだけど。バスケと何の関係があるのか謎だ。連想ゲーム?違うよなーそんなふざけたことしなさそうな顔してるもん。ひょっとすると緑間くんなりの願掛けみたいなもんなのかも知れない。

……って火神くん何やってんのあの子!何で緑間くんに話しかけてんの!あれ火神くんがマジック出した。……緑間くんの手に何か書いたー!いよいよ意味不明だ。そして何故どや顔。あからさまに怒った顔をする緑間くん。そりゃそうだいきなりマジックで手に落書きされたら怒るよね誰でも。もっと近くで聞こう(あわよくば火神くんの暴走を止めよう)と思って黒子くんのところあたりまで近づくと高尾くんの声が聞こえた。

「誠凛は去年決勝リーグで三大王者全てにトリプルスコアでズタズタにされたんだぜ?」

……聞かなきゃよかった話かも知れないな、これ。

呆然とする火神くんとどうしたらいいのか分からないあたし。日向くんたちは…冷静な顔をしてじっと緑間くんと高尾くんを見つめているだけだった。そこにどんな思いが隠されているのかあたしには分からない。

そうだ。あたしは今でこそ誠凛バスケ部のマネージャーだけど、知ってるのは今の日向くんたちだけで、去年までの彼らのことは全然知らないんだ。

「落としましたよ」

気まずい雰囲気を破ったのは黒子くんだった。過去の結果から出来るのは予想までです。その台詞に緑間くんの眉がひそめられる。「オマエの考えがどれだけ甘ったるいか教えてやろう」と言い捨てて緑間くんは去っていってしまった。『あの人は難しい性格っスから』という黄瀬くんの言葉が思い出される。うん、確かに難しい人だ。それにしても彼と黒子くんとの間のあの妙な緊張感は一体何なんだろう。キセキの世代にはキセキの世代同士の確執…とかがきっとあるんだろうな。

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