Machine-gun Talk! 14

「正邦を徹底的に分析しまくるわよ!」

そう高らかに宣言した相田監督に引っ張られながら連れてこられた先にバスケ部二年生が勢揃いしていてかなり驚いたのは内緒だ。

黒子くんの「でもピンチってちょっと燃えません?」発言に触発されて自主練に精を出しすぎたのと、お茶っ葉取りに帰ってる途中で水戸部くん(一人だと寂しいから半強制的に付き合わせた)にキャプテンの愚痴をこぼしてるところをあろうことか本人に聞かれて「お前ずっと走っとけよ」発言を受けたことによって筋肉痛の体に鞭打ちながらやってきた決勝と準決勝の会場の規模の大きさに降旗くんたち一年生同様あたしもめちゃくちゃビビっていた。

まさかこんな広くて綺麗な会場でバスケ出来る日が訪れるとは。嬉しさのあまりこっそり混ざってシュート練習しているとキャプテンに「早く茶作ってこいよダァホ」と勢いよくつまみ出されてしまった。悲しい。あたしもボール触りたい。お茶セットを持ったままうろうろしていると「キャプテーン!こいつですよね、誠凛超弱いけど一人すごいの入ったって」という元気な声が聞こえた。あのイガグリ頭は確か正邦の一年生じゃ……うわあ相田監督めっちゃ怒ってる!確かにちょっと腹立つ言い方だったとは思うけど!あ、岩村って人がイガグリ君殴った!痛そう!あのキャプテンさんめっちゃパワーありそうだからすごい痛そう!

でもあんまり可哀想と思えないのはやっぱり誠凛が馬鹿にされてしまったからなのか、それとも岩村さんに何かを言い返した日向キャプテンが異様に頼もしくてそっちに気をとられてしまったからなのか。とりあえずキャプテンが正邦に気をとられてるうちにさっさとお茶作ってしまおうかな。ここでぐずぐずしてると監督かキャプテンに鉄拳をおみまいされてしまうことをあたしはちゃんと今までの経験から学習しているのだ。人間の成長って素晴らしいね。

えー、所変わりまして、ただいま試合直前の誠凛高校控え室の中、次の試合に勝ったらほっぺにチューしてあげる!と大胆発言をするも部員に遠慮され更には「義理でも喜べ」と日向キャプテンにとどめをさされた相田監督がとうとうキレて選手たちを鼓舞したところなのです。黙って聞いてたけど本当は日向キャプテンの「もうちょいでバスケやめそうになった」発言ですごく泣きたくなってしまった。負けたときの悔しさとかプライドを打ち砕かれた絶望とかとはちょっと種類は違うだろうけど、みんなと同じようなバスケに対するやるせなさを自分も感じてきたような気がするからだ、と思う。語彙が少ないせいで上手く表現できないけれど。

「とりあえずめちゃくちゃ緊張してきたから早急に誰かあたしを抱きしめてほしいな!」
「何でお前が緊張するんだよ」
「どうしよう水戸部、俺が抱きしめちゃっていいと思う?」
「コガ何で真剣に相談してんだ水戸部困ってんだろ!馬鹿なこと言ってねーで行くぞ!」
「オウ!」
「あ、、今度はちゃんと作った茶持ってきてね」

キャプテンに一喝された後にびしりと前回のミスを指摘してくる伊月くんはなかなか鋭いと思います。ていうか遂にあたし伊月くんにさんじゃなくてって呼び捨てにされるようになってしまったのか。複雑な気持ちを抱えながら選手のみんなの後ろを歩く。この試合がうちの部活にとって大事な一戦だということは嫌と言うほど分かってる。だからこそ、ただのマネージャーでしかないあたしはどうか勝ってほしいと祈るしかないのです。

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