Machine-gun Talk! 16

第二クォーター、いよいよ正邦も東京最強のディフェンスを全開にさせてきた。一瞬止められるかと思った火神くんも黒子くんとの連携でイガグリくんを突破。東京最強王者の前にした踏ん張り所で怯む誠凛ではない…と思いたい。気になるのは火神くんの尋常じゃない汗の量とファウルの数だ。明らかにオーバーペースになってる。例のあの作戦があるとは言え、このままではヤバいんじゃないかな。

「ダメだ行くな火神!!」
「!?」

そう思ってた矢先、火神くんが4つ目のファウルをやってしまった。ベンチで頭を抱える監督と小金井くんを横目にあたふたと視線を泳がせる。例のあの作戦を伝えられたのか、「何とかして緑間倒してみせますよ!」と言って抗議している火神くんに心配すんなと言ってる日向くんの声が聞こえた。どうしてあの人はこういうとき、こうも頼りになるんだろうか。同じキャプテンの座を担う者として尊敬に値すると思う。

「正邦はオレ達が倒す」

あの目は本気だ。本気で勝ちに行こうとしている目だ。体中の血がざわざわと騒いでいるようでスコアブックを両手でしっかりと抱き抱えた。

日向くんのアウトサイドシュートと水戸部くんのフックシュートに的確な伊月くんのゲームメイク。リバウンドで活躍するのは土田くん。「うりゃー」とか「おりゃー」とか言いながら外れても外れてもシュートしていくコガくん。この型でプレーしている誠凛男バスを見るのはすごく久しぶりだ。去年は真剣にバスケする皆が羨ましくて外周しながら男バスの声が聞こえてくる体育館をずっと眺めてたんだよなあ。それが今はベンチでマネージャーとしてこうやって男バスの応援して、もう眺めてるだけじゃなくてちゃんとあたしも誠凛バスケ部の一員になれてるはずで、それで「んぎゃー!」……ってコガくん危な、……何してんのおおおおおおお!

完全に目を回してるコガくんに代わって出させてくれと騒いでいた火神くんを押しのけて黒子くんがコートに入っていく……と思ったら止まった。戻ってきた。何か忘れ物でもしたんだろうか。

「先輩たちの意地には後輩の敬意で返します」
「……は、」
「だからそんな風に黙って見ていないでください。先輩らしくないですよ」

頼りになるのは二年生だけじゃない。可愛い可愛い後輩だって一緒だ。不覚にも泣きそうになってしまった。不安がってる場合じゃないよね。その先輩の意地に対する後輩の敬意ってやつを、とくと見せていただこうじゃないか。

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