Machine-gun Talk! 18

秀徳との試合開始10分前なのにも関わらず火神くんが一向に起きる気配を示さない。

「黒子、火神のこと叩き起こしてこい」
「分かりました」

どうやら本当に黒子くんに叩き起こされたらしい火神くんは尋常じゃないくらいの闘争心を剥きだしにしながら整列しているもんだから、ベンチから見ていてちょっと心配になった。頼れる水戸部くんのおかげでうちの攻撃から始まった試合。初めからぶちかましていくつもりだったのが、火神くん渾身のアリウープが緑間くんに叩き落とされて開始後2分経っても未だ勢いに乗れず。緑間くんのスリーに会場がどっと沸いた。

高尾くんのパス回しは速いし緑間くんはあの落ちないシュートだけじゃなくて高さもあるのか…と思っていたら何やら黒子くんがもの凄い速さで回転し始めた。意図が掴めずにただただじっと見つめて黙っていると丁度いいタイミングで振り返った緑間くんの目の前を華麗にスルーしたボールにベンチにいるあたしの目も点になる。ボールがコートの端から端までぶった切った……!?

呆気にとられる、とはまさにこのこと。黒子くんあんな細い腕してるのに力ずくすぎる。どこにそんな力があるっていうんだろう……まさかそのためにあんな回転してたのか。なるほど。一人で勝手に納得していると緑間くんがシュートを打つのを躊躇うようなそぶりを見せた。自然と口角が上がる。さっすが黒子くん、インパクトに加えて見せつけるタイミングも完璧ってことね!侮れないのにも程がある。

だけど、緑間くんの超弾道スリーを封じられたからといって秀徳を止められた訳じゃなかった。黒子くんも侮れないけど緑間くんと緑間くんファミリーも一筋縄ではいかなさぎる。するするとディフェンスの目をかいくぐるように動き回る高尾くんのパスが大坪さんに回って火神くん並のパワープレイをお見舞いしてくれた。高校生であんな豪快にダンク出来るの火神くんだけだと思ってたよあたし。

攻めては押されて攻めては押されて、の誠凛との均衡状態を破るべく秀徳がついに動き出した。高尾くんが黒子くんのマーク。「誰がついても一緒だろ?見失うほど影薄いんだぜ」と最早自慢とは言えないような黒子くん自慢を一年生トリオがしているのが聞こえたけど、なんてそういうのとは違う気がする。誰がマークしても一緒ならあの王者秀徳がわざわざ高尾くんと交代させる必要があるとは思えないし。さっきの黒子くんの超ロングパスがザ・緑間くん封じなら、高尾くんには何かザ・黒子くん封じなるものがあるに違いない。

何かこうやって色々戦略とか相手チームの腹を探ってるのってマネージャーの仕事してるっぽくていいよね。そんなマネージャー視点から言わせてもらうと、高尾君は、こう……上手く表現できないけど、洞察力があるというか、鋭いというか。伊月くんと同じにおいがする。伊月くんの冷静さに反して高尾くんめちゃくちゃ楽しそうだけど。ねえ相田監督、このあたしの鋭い洞察についてどう思う?今日のあたし結構冴えてると思わない?

「もうちょっと黙って応援しないと試合中ずっと外走らせとくわよ」

黒子くんの超ロングパスを見せつけられたときもよりも緑間くんのウルトラスリーシュートが決められたときよりも背筋が凍ったのは言うまでもない。

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