Machine-gun Talk! 20

どれだけせがんでみても火神くんは新技とやらが何なのか教えてくれなかった。披露する機会をうかがっているのか、特に新しいことをしようとしている素振りは見受けられない。黒子くんのパスは高尾くんにスティールされてばかりで、点差はどんどん開いていく一方。そろそろうちのルーキーに行動を起こしてもらわないと不味い。なんて思っていたら相手方のルーキーである緑間くんがとんでもないシュートをお見舞いしてくれた。センターラインでぐっと身を屈めたと思ったらそのままシュート。高く放り投げられたボールはそのままゴールに吸い込まれていく。時間が止まったかのようにボールに目を奪われたまま動けずにいる誠凛を一瞥すると緑間くんは颯爽とゴール下まで戻っていってしまった。あれじゃ黒子くんの超ロングパスも使えやしないじゃないの!

キセキの世代ナンバーワンシューター、緑間真太郎。その実力をこれでもかというくらいに見せつけられて、地団太でも踏みたい気分になってくる。このまま何も出来ずに緑間くんのスリーばかり決められてしまえば誠凛の負けは確実だ。それだけは阻止しなくちゃならない。阻止しなくちゃならないんだけど、あんな高すぎるループでシュート打たれたらブロックのしようもないし緑間くんのシュート範囲はハーフコート全部だってことも判明しちゃったし、キセキの世代ってのはつくづく敵に回すと厄介である。

あたしが言うのもなんだが火神くんはスリーポイントシュートが苦手だ。だから点を決めたいときは大抵ダンクシュートで決める。いくらキャプテンや監督がちょっとはスリーだって出来たほうがいいから練習しろ、と言っても本人が断固拒否するもんだからもう誰も火神くんのプレイスタイルに文句は言わないようにしていた。

さすがに「ダンクのほうが決めたときスカッとするし、なにより盛り上がるじゃないっすか」なんて言われたときにはあまりの悔しさにコガくんと一緒に妄想ダンクシュート劇場を繰り広げたけど。つまり水戸部くんや土田くんに肩車をしてもらって自分がダンクした気分を味わおうとしたわけである。これがものすごく楽しくて、火神くんがありとあらゆる場面でダンクしたがるのも無理はないと思った。ダンクしたあと水戸部くんの上から降りれなくなって日向キャプテンのお叱りを受けたのは言うまでもない。

そのダンク大好き火神くんが緑間くんの目の前でスリーポイントシュートを放った。まさかそんなことをするとは夢にも思わなかった秀徳は目を丸くして放たれたボールの行く末を見つめる。火神くんがアウトサイドシュートが苦手なのを知ってる誠凛だって目が点だ。そのまま走り出した火神くんは飛び上がると外れたボールをそのままゴールにぶちこんだ。一人アリウープ。発想が突飛だとは前々から思ってたけど、それを実現出来ちゃう身体能力も何から何までめちゃくちゃすぎる。でもそんなところが頼れるんだからもうどうしようもないよね!やってくれると信じてたよルーキー火神くん!

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