Machine-gun Talk! 21

「王者がなんぼのもんじゃい!死ね!」
「おい日向本音出てる!」
「そうだそうだ!王者がなんぼのもんじゃい!ひねりつぶしてくれるわ!」
先輩は何キャラなんですかそれ」

いいところで日向キャプテンが決めてくれたおかげでなんとか点差を4点まで縮めることが出来た。王者相手に第一クォーターはまずまずの結果、あと残り三クォーターでどこまで食らいついていけるかにかかってる。

そんなことを呑気に思っていた矢先、誠凛側のコートにいた緑間くんがボールを持って身を屈めているのを見て身体が戦慄した。まさか。高く弧を描いたボールがそのままリングに吸い込まれていく。キセキの世代のナンバーワンシューター、緑間真太郎のシュート範囲はハーフコートどころではなくコート全てだったのだ。……そんなの有りなのかよ!

インターバル終了後。最後の最後にとんでもないものを披露してくれた緑間くんに誠凛は最早出す言葉もなくて、みんな不安そうな顔をしていた。「打つ手がないわけじゃないわ!」と監督は言っていたけれど、その打つ手がどこまで通用するかも分からない。

黒子くんを緑間くんのマークにつけてみたけど高尾くんのスクリーンに阻止されて呆気なく黒子くんが引きはがされてしまった。速さには定評のある火神くんもあっさりと抜かれてしまって面白いくらいに相手方の点が決まる。まさに化け物としか言いようがない恐ろしい実力だ。どれだけ食らいついていっても緑間くんにボールが渡ってしまえば三点分どんどん点差が開いていくんだから、一瞬だって気が抜けやしない。何も出来ない現実に心が折られそうになる。長すぎるボールの滞空時間にいたぶられてるみたいだ。

第二クォーターが終了して10分間のインターバルに入った。皆が思いつめたような顔をして、誰も言葉を発さない。何とかしてこの場の空気を盛り上げようと少し思ったけど、やめた。きっと今は何を言っても逆効果だろう。黒子くんはどこにいるのかと辺りを見回すと前半戦のビデオで高尾くんの動きを確認してるみたいだった。少しの期待を込めて「なんか勝算あるのか?」と聞いた伊月くんの声が次の黒子くんの返事で裏返る。「さあ?」って!何なの「さあ?」って!あんたそれでもキセキの世代幻のシックスマンである黒子テツヤなの!

「『勝ちたい』とは考えます。けど、『勝てるかどうか』とは考えたことないです」

そうだった。黒子くんはこうやって、いつもあたしの思考の斜め上をいく人なんだった。うん、勝ちたいって気持ちが何よりも大事だよね。黒子くんはそのまま言葉を続ける。

「てゆーか、もし100点差で負けてたとしても、残り1秒で隕石が相手ベンチを直撃するかもしれないじゃないですか。だから試合終了のブザーが鳴るまではとにかく自分の出来ることを全てやりたいです」

……いや、落ちない。隕石は落ちない。そんでもって多分相手ベンチに隕石が落ちたとしても100点差で負けてた試合結果は変わらない。いや、もしそうなったらまず試合中止になるだろうから100点差もなかったことになるのか?ん?あれ?訳分かんなくなってきたけどとにかく凄いなその発想!

黒子くんのある意味楽観的とも言えそうな意見に触発されてか、つっちーが「全員腹痛とかならあり得るんじゃないか」なんて言いだした。いや、多分それも故意に薬盛られたりしない限りはない。まあでも、「隕石に比べたら後半逆転するなんて全然現実的じゃん!」っていうコガくんの意見には全力で賛同するかな。今の誠凛に出来るのはとりあえず最後までちゃんと走ることだけなんだし、結果は出た後で考えればそれでいいんだから。

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