Machine-gun Talk! 22

第三クォーターが始まった。とりあえず緑間くんと高尾くん対策が見つかるまでは黒子くんはベンチだ。何か一つだけでも突破口があれば、そんな気持ちでコートを見つめる。とにかく緑間くんにボールが渡らないようにしなくちゃいけない。あ、コガくんがボール持った!入れ!入れ!入ったー!ナイスシュート!入らないんじゃないかってちょっと冷や冷やしちゃったよ!

「ちょっと皆ひどくない!?」なんてぼやいてるコガくんを尻目に、実は気がかりなことがあった。火神くんだ。様子がおかしい。殺気立ってる。そう、殺気立ってる!

もしかするとあたしの目はおかしくなってしまったのかも知れない。火神くんのブロックがどんどん高くなってるように見える。ありえない。幻覚だ。神様がそんな一人の人間に何物も与えるはずがない。だけど、確かに火神くんのジャンプは回を増す毎にどんどん高くなっていって、遂に緑間くんのシュートを掠った。この軌道は、まさか。

緑間くんのシュートが外れた…と、思ったら後ろから大坪さんが押し込んだ。そうか秀徳にはまだ大坪さんっていうおっかないプレイヤーがいたんだった。『緑間を止めた!』と色めき立っている外野を余所に試合はどんどん進んでいく。

「させるか!」
「むげっ」

あああああコガくーん!痛い!今のは痛い!ボールがお腹に当たるのは痛い!事故とは言え怒ってるよコガくん大坪さんにダブルチームやりながら顔にムキーって書いてあるよ!可愛いなチクショウ!

大坪さんに回すのは危ない。そう判断したのか、高尾くんが緑間くんにボールを回した。ぐっとタメの姿勢に入る緑間くんのボールを火神くんが叩き落とす。そしてそのボールを伊月くんがカウンターで決めた。なるほど遠くからスリーを決められるってことは、裏を返せばブロックさえやってしまえばこっち側のゴールはすぐそこだから絶好のカウンターチャンスになるって訳か。さすが伊月くん。こんなときでも落ちつき払ってる。

秀徳のシュートをとにかく叩いて叩いて叩きまくる。もはや火神くんの独壇場だ。「あいつ一人で秀徳圧倒しててすげえ!」なんて言われてるけど、違うよね。きっとそうじゃない。火神くんの足がガクッとなったのをあたしは見逃さなかった。なりふり構わずにカウンターで突っ込んでいく……けど、秀徳に食い止められる。ああもう何でこのタイミングで暴走しちゃってんのあの馬鹿……!

火神くんをこのままにしておいちゃいけない。そう感じていたのは、どうやらあたしだけじゃなかったようで。

「一人で勝っても意味なんかないだろ」

そう言って火神くんを殴り飛ばしたのは、標準語で静かにキレる黒子くんだった。……何これ冗談だよね?

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