ダンクは体力を消耗する割には点が2点しか加算されないから無駄だという人がいる。あたしは背も高くないし跳躍力も人並みだからダンクをする人の気持ちは分からないけれど、そんなことはないんじゃないかと思う。なんてったってバスケの花形プレーだ。ダンクをする選手がいると観てる方だって盛り上がれるし、チームメイトの士気も上がる。そういった意味で、同じ2点でもさっきの火神くんのシュートはかなりの価値があったんじゃないのかと思うのです。

第四クォーター終盤、残り数秒、点差は2点。最後の逆転のチャンス。一瞬の気さえ抜けやしない。先に集中力を切らした方が負けだ。

え、日向キャプテンあんな遠いところからスリー……入った！82対81！ナイスシュート！勝った！秀徳に勝っ

「勝ってねーよまだ！」

高尾くんのパスが緑間くんに渡った。緑間くんがタメの姿勢に入ったのがやけにゆっくりと見えた。まずい。完全に油断した。ブザービーターでやられる……！

もうとっくに限界だったはずの火神くんが跳んだ。だけど緑間くんの手からシュートは放たれない。残り数秒のこの場面でフェイクをかけるなんて勝負に出すぎてる。ここまで必死に食らいついてきたのにこんな形でやられるなんて、そう思っていたときだった。黒子くんが緑間くんのフェイクをかけて下げたボールを叩き落としたのだ。ブザーが鳴った。82対81のまま、試合終了。思わず隣の監督に抱きついた。コートの中で皆がガッツポーズをしているのが見える。

誠凛高校男子バスケットボール部決勝リーグ進出決定です！