Machine-gun Talk! 30

決勝リーグ出場校4校が発表された。誠凛と桐皇学園と鳴成と泉真館だ。今まで東京代表はずっと三大王者で決まりだったから何だか新鮮に感じられる、らしい。確かに今年は三大王者のうち二校を誠凛が倒した訳だから、あとは泉真館さえ倒してしまえば、勢いでどんどん行ってしまえるかもしれない。今年はもしかしていけちゃうんじゃない!?と言ったコガくんに激しく同意……しようとしたら、浮かない顔をしていた監督が口を開いた。

「あの二人が行ったのは桐皇学園よ」

桐皇学園とは、正邦や秀徳など名の知れた学校ではないものの、スカウトに力を入れてここ数年で急激に力をつけてきてる学校で、特に今年のメンツは秀徳と比べてもなんら遜色ないとのこと。秀徳と同等ってことはつまり、あの秀徳アンド正邦戦の目まぐるしい攻防もしくはそれ以上の死闘を繰り広げなきゃいけないってことで、うわあ、想像しただけで憂鬱になりそうだ。

さっきまではしゃいでいたコガくんや一年生も不安そうな顔をしている。すっかり士気の下がってしまった部内の様子をこれまたどうしたものかと考えていると、火神くんがやってきた。リーグ表のコピーを渡そうとしたキャプテンを制して火神くんにバスケをしたのかと問いかける監督の顔が怪訝そうに歪んでいる。しどろもどろしながら言葉を探している火神くんの様子に、後ろめたいことがあるのだということは誰の目にも一目瞭然だった。ぐおーっという効果音を思わずつけたくなるような、鬼のような形相で相田監督が怒る。何とかして監督を静めようとおろおろと右往左往する部員たちを尻目に、こっそりお茶セットを持って体育館を後にした。

お茶を作っていると逆立ちをしながら廊下を進んでいく火神くんとそれを追いかけているらしい黒子くんの姿が視界に入った。ちょっと立ち止まって話していた…と思ったらもう一度歩き出した。何を話してるのかすごく気になる。すごく気になるのは山々なんだけど、そろそろ作ったお茶持っていかなきゃ遅いって怒られるだろうし、下手すりゃ火神くんの一件で未だに腹の虫が収まりきっていない監督の鉄拳を食らいかねない。

ルーキーコンビの雑談を聞くのは泣く泣く諦めることにして、そそくさと体育館に戻るとミーティングは終わってしまったようだった。参ったなー連絡とか注意事項とか全部聞き逃しちゃったけど今更監督に聞くのも気が引ける。後で水戸部くんにでも聞いてみよう。そうしよう。あ、個人練に入ったみたい。お茶セットを隅に片付けて、意気揚々とボールを手にとると伊月くんが近づいてきた。

に言い忘れてたんだけど」
「んー?」
「初戦は桐皇学園らしいよ」
「まじでか!」

シュートを投げ込んで振り返ると伊月くんはもういなかった。もうあんなところにいる。黒子くんほどじゃないけど伊月くんも結構神出鬼没だよね。まあ黒子くんとは違って伊月くんは意図的に気配消してみたりやってるんだろうけど。この間キャプテンに「いちいちうるさい」って怒られたところだし、この際あたしも見習うべきなんだろうか。ていうかあの場合うるさいのはあたしじゃなくてむしろ日向キャプテンの方だったんじゃないかな。もちろんオカン的な意味で。

あ、桐皇学園っていったら美人さん(桃井ちゃん)に会えるじゃん。うわあ、強いとこと当たるのはやっぱり緊張するけど桃井ちゃんに会えるって考えたら楽しみになってきたな!緑間くんの超弾道シュートをどうにかして真似できないものか、とタメてタメてタメたシュートは力が入りすぎてリングに当たって勢いよく跳ね返り、入り口近くにまで転がっていってしまった。拾いにいくと丁度バッシュに履き替えてる所だったらしい火神くんと黒子くんが視界に入って、口喧嘩はしてるけど仲は悪くなさそうな様子に安心する。でも火神くん、怪我してるのに無茶してバスケするのは金輪際禁止だからね!

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