Machine-gun Talk! 31

いよいよ決勝リーグ当日。どうも落ち着いていられなくて朝練をしようかと思ったけれど、どうせ加減が出来なくなって夕方の試合までに体力が限界を迎えてしまうのは目に見えていたからやめた。靴紐をしっかり結んで気合を入れる。去年の誠凛の結果を超えるため、黄瀬くんに貰った「オレも応援しに行くっスからね!」なんていう可愛いメールのためにも、頑張らない訳にはいかないのだ。まあ実際頑張るのは選手の皆なんだけど、あたしも誠凛バスケ部の一員なんだから胸を張っていきたいと思う。

「全員準備はいいわね!?」

部室で腕を組みながら監督が声を張り上げる。いよいよこの瞬間が来たわけだ。大事な初戦よ!と激励の言葉を紡ぐ監督の言葉が一瞬途切れた隙に水戸部くんと伊月くんが両側からコガくんを固定する。え!何!?と事態が掴めずに動揺しているコガくんに心の中で合掌した。不本意そうな水戸部くんとは対照的に「今からお前は痛い目にあうんだぜ」とでも言いたげな伊月くんの顔に心の中でもう一度合掌。あいつコガくんの不幸を面白がってやがるぜ!いやそれはあたしも一緒なんだけどさ!

「なめんなー!!」
「へぶっ」

痛そうだな、とは思ってたけど想像以上にハリセンからは凄まじい音がした。生で聞くと迫力が二倍だ。なんで今オレはたかれたの!?しかもそのハリセン前オレが作ったやつなのに!と騒いでいるコガくんに湿布を渡すとジト目で睨まれたけど、そんな顔しても猫っぽさが増すだけで全然怖くないよ。ていうかそのハリセンわざわざ買ったのかと思ってたけどコガくんが作ったんだ。本当に器用貧乏なんだなあ。ハリセン作れるのが器用なのかは正直あんまり分かんないけど、とりあえず絶対勝つぞ!誠凛ー、ファイ、オオッ!

誠凛と桐皇の試合が始まった。ちなみに桃井ちゃんとは時々視線が交わるものの、未だに話せていない。初めから相手のボールだ。うわ、あの眼鏡の人のドリブルめちゃくちゃ早いよ!眼鏡さんのボールががちょっと気弱そうな男の子の手に渡って、……え、あんなところからシュート打つの!?しかも入った!スリー!今のはスリーを打つような動きじゃなかった気がするんだけどあんなモーションで入るのか。油断してた訳でも相手を舐めてかかってた訳でもないけど、開始してほんの数分しか経ってない今でも分かる。

このチームは強い。

相手方のリバウンドを積極的に取りに行ってる人の掛け声とパワーに水戸部くんが押されてるように見える。あの縁の下の力持ちの頼れる水戸部くんが。「どっせーい!」というパワフルすぎる掛け声に目を丸くした。騒がしい人はいるもんだけれど、あんな掛け声を聞いたのは初めてだ。しかも何あのパス…パスか!?力任せにぶん投げただけじゃないの!?あ、でもちゃんと眼鏡さんがキャッチしてるからパスなんだ。いいのか。通るのかあれで。

予想はしていた(というより伊月くんから聞かされた)けど、桐皇は超攻撃型のチームだった。ブロックしづらそうな気弱少年の速攻シュートに苛立っている様子の日向キャプテンが見える。あ、日向キャプテン決めた!さすがキャプテン!と思ったら桐皇がまたロングパスを繰り出してきた。それにしてもセンターのどっせーいの人、走りすぎだと思うんだけど…あんな走れる人見たことないよ。うわ!黒子くん出てきた!いつの間に!一体何処から湧いたの!

黒子くんがボールに向かって跳んだ、けど低い。低すぎる。あれじゃボールに届きっこな…ああ、そうでした。うちにはまだ驚異的な跳躍力を持つルーキーがいたんでした。黒子くんの決死のジャンプに畳み掛けるようにして火神くんがボールを取った。自分のチームの選手ながらその跳躍力には惚れ惚れさせられる。あんなに跳べたらバスケが楽しくてしょうがないだろうなあ。

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