Machine-gun Talk! 33

こいつは強敵になる気しかしないぜ!とおどけていられる場合ではなかった。自称前座の青峰くん抜きの桐皇にあれだけ苦戦をしいられていたのだから、エースが参加してパワーアップした桐皇の強さは最早未知数だ。青峰くんと張り合えるのはもちろん火神くんしかいないから、とアイソレーションの形態をとる。火神くんのスピードとパワーは一級品だと胸を張って言えるけれど、その速さを遥かに上回るスピードで青峰くんが猛攻をしかけてきた。火神くんが抜かれて、日向キャプテンのディフェンスもあっさりとぶち抜いて青峰くんがゴールを狙……火神くんが叩き落とした!でかしたルーキー!ナイスブロック!

そのまま速攻、桐皇の戻りが早い…けれど、黒子くんのイグナイトパス(名前が格好良すぎる)でしっかり回避。よっしゃそのまま火神くん決めちゃえ!と思っていたのも束の間、一瞬で追いついたらしい青峰くんが火神くんのボールを叩き落とす。そのままブザーが鳴った。10点の差をつけられたままだけれど、まだまだ巻き返せる目星はある、と思う。ていうかそう思っておきたいです。

更衣室で監督がレモン蜂蜜づけになり損ねたものを取り出して部員たちに拒否されて隅っこで落ち込んでいる間に、水戸部くんのお手製蜂蜜レモンをつまみ食いしているとキャプテンにどやされた。ええ、だってレモンの蜂蜜づけとか作ったことな……スイマセンちゃんと作ってきます。ちゃんと切ります。さすがに丸ごと漬けるのはゴロゴロしてて食べにくいもんね。

「黒子くんレモン食べないの?」
「すいませんボクはいいです」

ベンチに腰かけて一人考え込むような仕草をする黒子くんはどこか思い詰めているようで、レモンはどうかと勧めてみたけれど断られてしまった。黒子くんが静かなのはいつものことだけれど、何だか変だ。その違和感は黒子くんが「後半もこのまま出してもらえませんか」と言い出したことで確信に変わった。緑間くんと会ったときにもうっすら感じたキセキの世代の確執。それがやっぱり関係してるんだろうか。

確かに黒子くん抜きでは青峰くんを相手にするのはキツいという意見と、ミスディレクションの効果を保つためにも一度下がるべきだという意見、そして、どうしても青峰くんに勝ちたいんだという黒子くん本人の意見。どれに賛同すべきか決めかねていると、黙って聞いていた火神くんがため息をついた。そして監督お手製のレモン丸ごと蜂蜜づけを手にとると、あろうことかそのまま黒子くんの口に突っ込んだ。ばこっという効果音つきで。

「まかせとけ」

今日はやけに火神くんが頼もしく見える。レモンを口にくわえたまま火神くんを見つめる黒子くんがちょっとシュールだ。エースの気合いを買って、つっちーと水戸部くんがゴール下、キャプテンと伊月くんが眼鏡さんと気弱少年のマーク、そして火神くんにエース青峰くんを任せることになった。

黒子くんが復帰する第四クォーターまでに何とか食らいついていくためのベストメンバーだ。気合いを入れようと監督のレモンをかじってみたけど甘くもなく酸っぱくもなくただただ苦かった。柑橘類はやっぱり皮ごと食べるもんじゃないのだと悟る。レモンは苦いけどとにかく全員気合いも入れ直した訳だし、いくぞ、誠凛ファイ、オオッ!

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