Machine-gun Talk! 39

「海だ!」
「泳ごう!」
「地平線が俺を呼んでるぜキャッホー!」
「合宿だ!ダァホ!!」

合宿開始早々キャプテンに怒られてしまった。まっくろくろすけがいるかも知れない(いないと思う)と騒いでいる木吉くん達を眺めていると目の前に車が止まって、監督が降りてきた。そういや持ち込むものが色々あるから車で行くって言ってたんだっけ。

「娘に手ェ出したら殺すぞ」

監督のお父さん怖ええええめちゃくちゃ睨まれたよ眼力やべえ。全員揃ったことだし体育館に行こうとしたら監督に「どこ行くのよ?」と止められた。どこって体育館だけど……。

「体育館借りるのもタダじゃないのよ夕方から!」

え?じゃあ昼から海行くの?泳いじゃっていい感じなの?いやいや、まさか監督に限ってそんなことは、

本当にそんなことはなかった。砂浜にそびえ立っているのは紛うことなき見慣れたバスケットゴールで、ってことはつまり……?

「監督……まさかここで……」
「そ、バスケするの」

やっぱりバスケするのか!ご丁寧にゴールまでちゃんと用意してバスケするのか!監督の『色々持ち込むものがある』っていうのはこれのことだったんだと悟った。監督はこの合宿の目的は弱点克服なのだと説明しながら話を続けていく。

「今誠凛に必要なもの……それは、選手一人一人の個人能力の向上よ」
「!」

まずは土台となる足腰を強化するために砂浜練習を行うのだと監督は説明する。話の流れからすると、今日はいつもの練習メニューの二倍やらされるってところかな。もう既にこの時点で悪い予感がしているのはあたしだけじゃないはず。相田監督が制服を脱ぎ捨てて大きく息を吸い込んだ。……二倍だ。

「まずはここでいつものメニュー……の、三倍よ」

三倍きたー!嘘だろ!絶対死んじゃうと思うんですけど!

砂浜に足を取られてしまって全然思うように動けない。黒子くんがついついバウンズでパス出しちゃってキャプテンに怒られていた。ドリブルが出来ないからひたすらパスでゲーム組み立てなきゃいけなくて、練習自体は三倍でもいつもの五倍は早く体を疲労が襲ってくる。火神くんがボールを持ってダンクしようとして、上手く飛べずに失敗。「お前の辞書にはまじダンクしかないんかダァホ!」こればっかりは日向キャプテンに同意するかも。

「いぎゃー!」
「どうした!?」
先輩が砂浜で足を取られて蟻地獄みたいになってます!」
「面倒くせえから放っとけ!」
「そんな嫌だ皆あたしを見捨てないでー!」

一段落ついてから助けに来てくれたコガくんがあれほど輝いて見えた瞬間は後にも先にもきっとこのときだけだったと思う。

所変わって夕方からの体育館練習。バッシュの動きやすさに感動して走り回っていたら黒子くんにぶつかってしまった。今ならいつもの倍速で動けそうだしダンクも出来る気がする!

「ぶっちゃけ勘違いだけどな」
「まあ確かに半日でいきなり筋力がアップしたりはないな」

そんなことを言っていた日向キャプテン達も練習中の動きやすさに驚いていた。キャプテンのシュートの決定率もいつも以上だ。ほらやっぱり勘違いじゃないでしょ本当によく考えられてるよね!この練習考えたのあたしじゃなくて相田監督だけどちょっと自慢気!

調子に乗って動き回っていたら見事に筋肉痛になってしまった。合宿所のお風呂がかなり気持ちよくて長風呂しちゃったけどお陰でちょっと疲れがとれた気がする。監督に一緒にお風呂入ろうって誘ったけどすぐさま断られて寂しかったから一年生達の部屋にお邪魔してみることにする。ちょ、福田くん背中押す力強いよもうちょっと優しくお願い!

「木吉くんボールどこにあるか知らない?」
「ボールならさっき日向が持って出てったらしいぞ」

自主練してもう一汗かいてお風呂入って寝ようとしたら、どうやら日向キャプテンが先にボール持ってっちゃったらしい。あの人には本当に敵わないよなあ。そんなに何個もボール持ち出しちゃうのも悪いし、今日はちょっとランニングしてからお風呂入ることにしよっと。入り口にいた女将さんたちがかけていた『秀徳高校バスケットボール部様』の札には目もくれず、あたしは途中で日向キャプテンを見かけたらワンオンワンの相手でもしてもらおうと考えながら砂浜へと向かった。

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