Machine-gun Talk! 41

秀徳との合同練習は結果として誠凛にとってのめちゃくちゃ良い刺激になった。どれくらい良い刺激になったかというと、割と板についてきたんじゃないかと我ながら思っていたフックシュートを高尾くんに褒められるくらいには良い刺激だったと思う。人懐っこいというか話しやすい高尾くんとは対照的に、緑間くんは相変わらず一人で黙々とスリーポイントシュートを打ち込み続けていた。何度か見惚れてしまってこっそり技術を盗もうと企んでたらバレちゃったらしく「オレの必殺技をそう簡単に真似されてしまっては困るのだよ」って全く困ってなさそうに言われた。自分の実力に対する自信に満ち溢れすぎてて格好良くて弟子入りしたくなったけど、宮地さんって人が青筋立てながら「誰かコイツ轢き殺す為の軽トラ持ってこい早く!」って言ってたから秀徳のレギュラーの皆さんは仲が悪いんだか良いんだか不明だ。謎がまた一つ増えてしまった。

自主トレに勤しんでいい汗かいてお風呂でさっぱりしたらアイス食べたくなってきたからコンビニまで行こうとした途中で、つっちーと一緒に後輩にシュートを教える水戸部くんと会った。この二人が一緒にいるのって珍しいな。いつも大概コガくんを二人で挟んでる感じなのに。

「水戸部くんがつっちーと二人でいるって珍しいね。小金井くんは?出掛けたの?あ、そうだ秀徳と練習してた時フックシュート高尾くんに褒められたんだけどね、向こうのキャプテンの大坪さんも『教え方が上手いんだろうな』って水戸部くんのこと褒めてたよー何かあたしまで余計に嬉しくなっちゃった」
「…………」

水戸部くんとの会話での沈黙は嫌いじゃない。言葉じゃ表せない安心感があるというか、一緒にいてほわーっとする。あと大抵の場合別れるときに飴くれるんだ。つっちーとコガくんの二人の水戸部くん考察によると、「水戸部兄弟いっぱいいるから保護者みたいな気持ちなんじゃない?」とのこと。保護者って同い年なのに…とは思ったりもするけど、どういう形であれ構って貰えるのは素直に嬉しいから今日も水戸部くんの手から黄色い飴を受け取った。一昨日は青色だった。きっと下の兄弟達もこうやって水戸部くんに手懐けられてるんだろうね。

「コガなら伊月と走りに行ったぞ」と教えてくれたつっちーにお礼を言って、コンビニまでゆっくり歩く。秀徳さんが来たお陰でもあるけど充実した合宿だったなあ。監督が毎回毎回料理に変な調味料入れようとするから止めるの大変だったけど。アイスもあたしの家の近くのコンビニには売ってない種類のアイスが売ってて心も体も大満足。帰り際にコガくんと伊月くんが走ってるの見つけて追いかけようとしたけど転びそうになったからやめた。楽だからってサンダル履いてくるんじゃなかったな、やっぱりスニーカーにしとけば良かったかも。

片したゴールがある方からボールをバンバンつく音が聞こえたから誰か自主練でもしてるのかと思えばなんと、火神くんと緑間くんがワンオンワンをしていた。この間の試合のときと違うのは火神くんがオフェンスで緑間くんがディフェンスってことだ。火神くんのジャンプはかなり高いのに、緑間くんはそのシュートを悉くブロックする。さすがはキセキの世代。

視線を移すと緑間くんと火神くんがワンオンワンをしているのを茂みの隅っこで隠れて見ている高尾くんと黒子くんを見つけた。何してんの君たち。覗き見はダメだよーあたしも人のこと言えないけどね!

「どれだけ高く跳ぼうが止めることなどたやすい。なぜなら、必ずダンクがくるとわかっているのだから」

まずい、緑間くんがこっちに向かってくる。なるべく足音を立てないようにして足早にゴール前から立ち去った。…それにしても、さっきの緑間くん、まるで火神くんにアドバイスしてあげてるみたいだったなあ。

「ありがとうございました!」

女将さん達にお礼を言って、合宿所を後にする。しきりに生きてることを確認する皆がちょっと面白かった。駅に行って帰ろうとしたら監督に引き止められた。どこって、え、駅だけど……。監督の言葉にそうだったと思いだし、携帯を操作して対戦表を確認する。

「このまま見に行くわよ、インターハイ」

『海常高校(神奈川)vs桐皇学園(東京)』

それはつまり、黄瀬くんと青峰くんのキセキの世代の直接対決を意味していた。

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