Machine-gun Talk! 42

連載番外編参照

あたしとしたことが、笠松さん(海常)の試合をチェックし忘れてしまうだなんて、とんだ失態だった。インターハイ決まったって黄瀬くんから連絡もらってたのに!バスの中で慌てて激励のメールを送ると『会場に着いたら電話してこい』って返ってきて、感動のあまり後ろに座ってた黒子くんに報告しようとすると「暴れないでください」ってたしなめられた。あたし暴れてないのに。心の中では小躍りするくらいの勢いで喜びまくってるけどさ!

「お久しぶりです会いたかったです握手お願いします」
「何でだよバーカ」

言われた通りに電話すると黄瀬くんではなく笠松さん直々に迎えに来てくれた。「試合には遅れんじゃねーぞ」と釘を差してきたキャプテンの忠告を背中で受け止めて、控え室近くのベンチに座る笠松さんに手を差し出す。あ、やっぱり握ってくれなかった……。まあいいやこうやってメール返してくれただけでも女の子苦手って言われた時に比べたらめちゃくちゃ進歩した方なんだし。笠松さんはこのインターハイに特別な思い入れがあるらしくて、何度も息を吐いたり吸ったり精神統一をしていた。聞きたいけど、聞いちゃダメなんだろうな。ていうかあたしここにいていいんだろうか。黄瀬くんとか早川くんとか森山さんとか小堀さんとかは……?邪魔しちゃ悪いしそろそろ戻ろうとすると「……お前は何しに来たんだよ」笠松さんに引き止められた。何ってそりゃ、笠松さん応援しに来たに決まって……、あ。メールで送りつけて満足してたけどあたしまだ笠松さんに激励の言葉かけてないじゃん。いや、多分ここはあえて「頑張れ」って言わない方が良い、のかな?分かんないああもう助けて黒子くん国語力的な意味で!

「あの、笠松さん」
「……何だ」
「えーと、その、プレッシャーかけようとしてる訳じゃ決してないんですけど……」
「…………」
「試合、応援してます」
「……おー、ありがとな」

俺に気を使ってか、必死に言葉を探して一方的に「頑張れ」とは言わないコイツのこういうところに情けないけど今は結構救われたと思った。メールでも『一緒に頑張りましょう!』とか言われたしな。オレはともかくお前は何を頑張るんだよ、っつー話だけど。黄瀬が近づいてくるのが見える。もう5分前か。

「桐皇応援すんのもウチ応援すんのもお前の勝手だけど、見に来た限りはしっかり見て帰れよ」

あえて何をしっかり見とけとは言わない。そういや握手求められてたな、と思い出して一瞬だけ手を握ると黄瀬のモデルスマイルばりの笑顔でパアッと笑いながら握り返された。いつもオレがしている主将同士の握手よりも大分と力が弱い。誰にだってやっぱり批判されるよりは応援されるほうが気持ちがいいもんだ。バスケ関連になると女子相手でも饒舌になれるもんなんだな、と自分に感心しながら「海常の皆さんにも応援してるって言っといて下さい!あと早川くんにそんな早口で喋ってたら終いに舌噛むよとも!よろしくお願いしますね!うわっ遅れたらキャプテン達にまたどやされる!」とか騒ぎながら駆けていく背中を見送った。あいつにまで心配されるなんて早川の暑苦しさと早口は相当なもんなんだな。いっそのこと舌噛んでしばらく喋れなくなればいい…とは思わない。リバウンドさえ取ってくれればそれだけでもアイツの価値なんざ十分だ。このチームのキャプテンに選ばれた以上、このインターハイで優勝する。それがオレのけじめで、キャプテンとしての存在意義だからだ。おい、「ふーん」ってお前、聞いてんのかよ黄瀬!「死んでも勝つっスけど」……そりゃオレだって一緒だわ調子乗んなモデル。

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