Machine-gun Talk! 46

マストで飯食ってるときに降旗からストバスに誘われた。5オン5だからオレと黒子と降旗と河原と福田の5人で人数も丁度なのか。

「お前らはいつも試合出てるからいーけどオレ達だってたまにはゲーム出てーんだっつの」

まあ、確かにその言い分も分からなくもない。部活休みでも寝るだけで別に他にやることもねーしな。二つ返事でオーケーしたところでふと思い出した。先輩も確かゲーム出たいっつって騒いでなかったか。騒いでた気がする。インターハイ見に行ってからあたしの闘争本能が騒いで仕方ないんですけど!っつってキャプテンに怒られてた。オレが言うのも何だがあの人もホントに懲りないよな。バスケが好きだっていう点ではこうして休日にバスケしようとしてるオレらと変わんねーと思うけど。

「そのストバスに先輩も誘わなくていいのか?」
「何か女子のチームに入れてもらうんだって」
「つーかそもそもストバスのチラシも先輩に貰ったしな」

あの人はどこまでもオレの予想の斜め上をいく。久しぶりに女の子とバスケ出来るから見下ろされなくてすむっつって喜んでたらしい。見下ろされなくてすむって……先輩そんなこと気にしてたのか。まあ確かに木吉先輩と話してたときに首痛いから座ってって言って座らせてたし、水戸部先輩に肩車されて喜んでたし、お父さんに持ち上げられて喜んでたし、かく言うオレも何度か「話しづらいから」って理由で中腰になりながら会話させられた。端から見たらそれはそれはもう間抜けな光景だったんじゃねーかと思う。

ストバスの会場は予想以上に混雑してて賑わっていた。こういうとこはアメリカと変わんねーな。もしかしたら先輩に会えるんじゃねーかと思ったりもしてたけどこの様子じゃ無理そうだ。いや、多分一人でめちゃくちゃ楽しんでんだろう先輩よりもオレは何故か河原の代理でいる木吉先輩の方が気になるところなんだが…いや別にダメとかじゃなくて。気になるだけっすから。

エントリーをしようと受付に向かう。「バカそれ字違うじゃん津川~」…………津川?

「正邦―――!?」
「誠凛―――!?」

奇遇だねっつーかタイミング良すぎじゃねーのか。向こうの三年に「アンタらこそいいのかよ練習」と言うと津川に「なんだそれ嫌味!?」と大袈裟に反応された。は?嫌味?何の話だよ?

「津川はともかくオレ達三年は引退だ」

引退。そうかウィンターカップ予選に出れるのがインターハイ予選上位8校ってことはオレらに負けたおかげで他の学校の三年は自動的に引退っつーことになるのか。誠凛には二年の先輩しかいねーからあんまり実感湧かなかったけど負けるってのはつまりはそういうことで。まさかこんなとこでまた津川たち正邦と出会うとは思わなかったけど、とりあえず宣戦布告されたからには全力でいかせてもらおうとするか。

「さっきからちょいちょいもの思いにふけりますね」
「うおわっ」

いきなり話しかけてくんなよ黒子!もの思いにふけりますねって、そりゃ、ちょっと雰囲気がアメリカに似てたから思い出してただけだ。無意識のうちに胸元につけたリングに手がいった。(死んだ訳じゃねーけど)いつもバスケ一緒にやってた仲間との思い出だ。うん。間違っちゃいねえな。

「もう一度なんとか戦いたいけど、もう二度と戦いたくねえ」

仲良かったのかそれともウマが合わなかったのかすら今となっては不明だ。バスケ続けてたらそのうち会えるかもしんねえけど、会っても何て顔して会えばいいのかよく分かんねえし。つーかマジで黒子の観察眼侮れねえんだけど。

「やっべー遅くなった」
「火神がまた腹減ったとか言うから!」
「もう正邦勝っちゃってるんじゃねーの?」

何か騒がしいな、と思ってコートを覗くと32対51で正邦が負けていた。そんな馬鹿な。あんな鉄壁の守りを崩せる奴なんてそうそう存在しな……は?

「なんで……ここにいやがる……」

もう二度と戦いたくねえし顔も見ることすらないんじゃねえかと思っていた。それがまさか、こんなところで、こんな形で会うなんて、

「氷室……辰也……!」

首に光るリングが目の前の人間が誰なのかはっきり教えていた。

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