Machine-gun Talk! 47

ストバスのチラシを見つけて出てみたいと思ったついでに、降旗くんにも渡してみると念願のゲームが出来るとものすごく喜んでくれた。当日参加オーケーだから欠員が出たチームに混ぜてもらってゲームをして、何回か勝ち進んだけど負けてしまった。それでも最後にはハイタッチしてくれたあのチームの人達は物凄く良い人達だったんじゃないかと思う。おかげで女の子と久しぶりにバスケが出来て楽しかった。一仕事終えたような気分で辺りを見回す。もしかしたら降旗くんたちどこかに居るかもしれないなー火神くん背高いからきっとすぐ見つかるよね。

チームに入れてくれた女の子達にハイチュウをお裾分けして別れると何やら人だかりが出来ていることに気がついた。よくよく見つめるとあの正邦のキャプテンがいるような気がする……あ!イガグリくん!イガグリくん発見した!ってことはあそこにいるのやっぱり正邦なんだ!

もっと近くに行こうとすると得点板が目に入って、……32対51?正邦が負けていた。正邦を見下ろすようにボールを小脇に抱えながら立ってるお兄さんの正面で対峙してる赤髪の男……って、あの子もしかして火神くんなんじゃないの?

火神くんらしき人のそのすぐ後ろには降旗くんと福田くんと黒子くんがいたからやっぱりあれは火神くんなんだと確信する。あともう一人は河原くん、じゃなくて木吉く……え?木吉くん?一年生に混じって何してんの?

「I never expected to see you here.What a surpise!(まさかこんな所で会うとはな。驚いたよ!)」
「You don't looked surpised at all.Still wearing a poker face?(全然そう見えねーよ。ポーカーフェイスは変わんねーな)」
「I'm not trying to hide my feelings.I'm just expressing them in my way.(別に感情を隠してるわけじゃない。これでも表現してるよ)」

そんな……火神くんがまさか英語で喋るだと……?

「ちょちょちょ!黒子くん!何これ!どうなってんの!何か火神くんが流暢な英語でボール持ったお兄さんと会話してるんだけど!ていうかそもそもあのホクロのイケメンお兄さん誰よ!火神くんの知り合い?」
「僕にも状況がよく分からないんですが……知り合いみたいですね」
「友達とは違うよ、強いて言えば兄貴かな」
「ああ……」

どうやらホクロのイケメンお兄さんは火神くんの兄貴分で氷室辰也さんというらしい。え?火神くんの一個年上?ってことは同い年じゃん!うわ!大人っぽいな!絶対年上だと思ってたのに!

火神くんの回想を要約するとつまりはこうだ。アメリカに引っ越したのはいいものの友達が出来なかった火神少年は、日本人でめちゃくちゃバスケが上手い氷室さんと出会ってバスケを始める。兄弟の契りを交わした後に一度は別れた二人は大きくなって再会して、競い合ううちにお互い49勝のところまできてしまった。氷室さんを兄と呼び続けたい火神くんに氷室さんは「もしタイガが次の試合に勝ったらもう兄とは名乗れないな」って言って、それを気にした火神くんが試合でわざと手加減して自分が勝たないようにした。怒った氷室さんは火神くんと「次の試合に思い出を賭けろ」と約束して、だけどその後すぐに火神くんが日本に帰ることになって、結局二人は戦えずじまいだったというわけ。あまりにも劇的な展開にドラマか!と突っ込みたくなってしまったから頭の中で勝手に言っといた。

「今日こそ……あの時の約束を果たそう」

何か凄い場面に居合わせちゃったぞ。

「オレは……もう……お前とは」
「!?」

ごすっという音を立てて黒子くん操るテツヤ2号が火神くんに犬パンチを繰り出した。えええええ。

「いって……2号ー!?」
「火神くんにウジウジされると鬱陶しいです」
「ああ!?」
「話は大体分かりました。その上でボクの思ったこと言っていいですか?」

こういうときの黒子くんにダメだと言っても無駄だってことをあたしは知ってる。火神くんが何を言おうとも彼は自分の意見を主張するつもりだ。

「とりあえず……最後に手を抜いた火神くんが悪いと思います」

反論しかけた火神くんだったけど黒子くんの「やっぱり大好きなバスケで手を抜かれて嬉しい人はいないと思います」という言葉で押し黙ってしまった。兄弟分でいたい火神くんの気持ちと、手加減してほしくなかった氷室さん(同い年みたいだけど氷室くんって呼ぶのは気が引ける)の気持ちの両方が分かるからすごく心苦しくなってしまう。黄瀬くんと青峰くんの試合を見てきた後だから尚更なのかも知れないけど、あたしも木吉くんとか笠松さんに「オレにお前が勝ったらもう憧れるのはやめてくれ」とか言われたら躊躇っちゃうと思うもの。黒子くんの説得?のおかげで火神くんの目に闘志が戻った。

「もし戦うことになったら何があっても全力でやるよ、タツヤ」

よく言ってくれた!それでこそ火神くんだ。お姉さんは嬉しいです。何気にさっきの2号の犬パンチも効いたんじゃないかと思うんだよね。

「ところで、キミ。……ゴメン誰……だっけ?」

あ、やっぱり黒子くん氷室さんに認識されてなかったんだ。そういえば自己紹介ほとんどしてなかったもんね。

「黒子テツヤです。はじめまして」
「そうか、キミが……面白い仲間を見つけたな、タイガ」

何故か黒子くんを知っているような素振りを見せた氷室さんは「オレがいくチームにも面白い奴が一人いるんだ」なんて、意味深なことを言って去っていってしまった。終始ポーカーフェイスなせいもあるのかも知れないけど大人っぽい人だったなあ。そして根拠はなくてあくまで勘だけどバスケすっごく上手そうだ。火神くんの兄貴分っていうんだから相当なもんなんだろうけど、なんていうか……只者じゃない感じがする。

氷室さんのチームと誠凛が決勝まで勝ち残って、とうとう二人の運命の一戦が始まろうとしていたそのとき、ボールに何かが乗っかった。まいう棒だ。………え?まいう棒?そんなもの一体どこから飛んできて、

「ゴメ~ン、ちょおおっと待ってくんない」

ゆるっゆるの喋り方をしながら火神くんや木吉くんを遥かに凌ぐ高身長の男の子が登場した。「お久しぶりです、紫原くん」黒子くんの知り合いみたいだ。いや、知り合いみたいだっていうか、紫原って名前と見た目から判断するにおそらく彼はキセキの世代なんじゃないかと思うんだけど。

「相変わらず真面目な眼だねぇ……真面目すぎて、ヒネリつぶしたくなる」

そう言って紫原くんは黒子くんの頭に手を伸ばした。え、ちょ、何するつもりか知らないけど黒子くん危な「な~んてウソウソっ」…………へ?

紫原くんは恐ろしい台詞を吐いた後とは思えないくらいのゆるい口調でわしわしと黒子くんの頭を撫でていく。ちょ、ずるいっていうか結構距離が縮まったと思ってたあたしでさえまだ撫で回したことないのに!先を越された!撫でられる感覚にイラッとしたのか黒子くんが紫原くんの手を振り払う。大して気にする様子もなくお菓子を頬張りながら氷室さんに怒ったりインターハイには出てないと言ったり「赤ちんが言ったからそうしただけだし」とよく分からない弁解をしたり火神くんの眉毛を引っこ抜いたりする紫原くんはなんていうか、こう、今までの黄瀬くんとか緑間くんとか青峰くんとは違って全く攻撃的じゃないというか…ゆるいっていうか…脱力感がある。降旗くん達が言うように天然系なのかも知れない。ていうかキセキの世代のキャプテン赤司くんっていうんだね。響きだけでも強そうな名前だ。

prev | INDEX | next