Machine-gun Talk! 55

ザアザア雨が屋根に打ち付ける音が聞こえて、そういや前の試合のときも降ってたんだよなあと思い返す。秀徳戦が始まろうとしていた。

前回は無敗の余裕みたいなものを醸していた緑間くんの様子がおかしい。勝利に飢えた獣のような雰囲気を纏い、火神くんを完全に好敵手として認めているようだった。監督の言うように、もし、緑間くんの超弾道シュートの弾数に限界があるのなら、試合は火神くんの活躍にかかってるといっても過言じゃない。大坪さんと木吉くんのジャンプボールはほとんど互角で、誠凛ボールから始まった試合は初っぱなから黒子くんのスティールから緑間くんのシュート、そしてそれを叩き落とした火神くんのブロックと火花をバチバチ散らす展開になった。

てっきり何か新しい技を身に付けてくると思っていた緑間くんはあくまでスリーポイントシュートにこだわり続けていて、第2クォーターに突入した今でも緑間くんの打つシュートを火神くんがブロックして、更に緑間くんがシュートを打ち込もうとするもまた弾き落とされて…の繰り返し。本当に体力の限界が来るまで打ってはブロック、打ってはブロックの応酬を続けるつもりなんだ。

根比べのような状況で、旗色が悪いのは緑間くんより先に消耗しているように見える火神くんと誠凛。高尾くんのホークアイがある限りは黒子くんのミスディレクションも使えないし、何と緑間くんはフェイクまで混ぜ込んできた。後出しであれに触れた火神くんの脚力に称賛の言葉を贈りたい。まだ生きてるボールを捕った黒子くんがお馴染み超弾道パスを披露してくれたおかげで誠凛の点が決まった。だけど火神くんのあのジャンプはやっぱりそう何度も連続して跳べるようなものじゃない。体勢を崩した火神くんに代わってブロックに跳んだのは木吉くんだった。そして、そのままシュートすると思われたボールは高尾くんの手に渡る。

「こうくるのを……待ってたんだよ!」

緑間くんが何度もブロックされても懲りずにスリーポイントシュートを撃ち続けていた本当の理由は自分を囮にしてパスを出すことだったのだ。まずい。意表を突かれた。完全にアウトナンバー、成す術もなく点を決められる。まさか緑間くんがチームプレイに興じるなんて思いもよらなかった。彼が一人で戦っていたからこそ隙があったようなものなのに、その緑間くんがチームのために動くようになったってことは手強いなんてもんじゃない。本当にシャレにならない。弱点が消えたってことになる。どうすりゃいいんだよそんなの!

「うろたえるな!ちゃんと声出して応援するのよ!」

一年生と一緒になってオロオロしていると監督に一喝された。てっきり隣で同じくオロオロしてるかと思えば、小金井くんは頼もしい顔をしていて、その目線の先には木吉くんの姿が。こういうときこそ頼りになる男、か。

「楽しんでこーぜ!」

こんな状況で楽しんでられるか!なーんて、言えないのは木吉くんなら本当にこのピンチも救ってくれそうな気がするからなんだろうなあ。

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