Machine-gun Talk! 56

黒子くんを引っ込めて水戸部くんを投入した誠凛が選んだのは点を取られるなら、それ以上に走って攻めて点を取り返してやる!という極めて単純明快な攻撃法だった。元々のプレイスタイルがラン&ガンのスピードバスケットの分、皆がすごく生き生きしてるように見える。もちろんハイペースの点取り合戦だけじゃ秀徳は止められない。パワーの大坪さんもいれば、百発百中の緑間くんだっているのだ。一瞬たりとも気が抜けない。シュートを決めて背中をバシバシ叩かれてる緑間くんは何だか新鮮なように感じた。第二クォーター終了時で2点差、まだまだ試合はどうなるか分からない。切り札の黒子くんのドライブを出す前に逆転されてしまえば、誠凛にとって厳しい展開になること請け負いだ。

「いい加減にさあ、新しいドライブってどんなのか教えてよ」
「ダメです」

試合当日になってもこの調子。「さんには驚いてもらいたいので」の一点張りで、一向に教えてくれそうにない。火神くんのときもこんな感じだったような気がする。何だ二人してあたしを仲間外れにするような真似して!秀徳さんと同じタイミングで驚けっていうのか!心配しなくても自ら切り札を暴露するほどお喋りでもないんだから教えてくれたっていいじゃんね!

緑間くんのパスが高尾くんの手に回って、そのまま秀徳の必勝パターン、4対3にもつれ込む…と、思ったら違った。

「外すなよ!」
「ありえん。黙れバカめ」

緑間くんへのリターン、なんてパターンも存在したらしい。そんなのアリなのかよ!いや!当然アリなんだろうけど!後半早々、緑間くんのスリーポイントシュートで逆転を許してしまった。まだまだ凹むとこじゃない。怯まずラン&ガンで攻めるも宮地先輩にスティールされて、カウンターを食らった。宮地先輩は綺麗な顔してるのに発言がときどき暴力的だ。緑間くんへのダブルチームを続行する火神くんの脚にもガタが来始めてる。

「黒子くん、」
「……分かってます」

今なら新しいドライブが出せる。黒子くんがそう宣言してくれたことで内心ホッとした。小金井くんが言うよう木吉くんが幾度となく誠凛のピンチを救ってきてくれたように、今のピンチだって黒子くんが救ってくれるはずだから。

黒子くんの切り札を最大に生かせるタイミングを計るために誠凛がペースを落とした。高尾くんではなくあろうことか緑間くんと、しかもボールをキャッチした黒子くんにただならぬ事態が起こっているのだと確信する。そういえば何度かボールをキャッチしてる場面を見たことがあるような…ないような。今までタップパスしかやってこなかった黒子くんがボールを持っただけでも驚きなのに、うわ、抜いたー!黒子くんが緑間くんを抜いた!一瞬見失ったっていうか消えたよね!?ワアアアアと湧く場内に誠凛も大喜びで、秀徳と同じく度肝を抜かれてしまったあたしはただただボールに釘付けになるしかない。黒子くんが入ることでスティールが取れる確率も格段にアップして、第三クォーター終了間近になって76対76の同点。最終クォーターを残して、両者振り出しに戻る。黒子くんの消えるドライブも加わって、ここからが本当のお楽しみ。誠凛の正念場での底力を舐めてもらっちゃ困るのだ。

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