Machine-gun Talk! 57

もうとっくに弾数が切れてもいい頃なのに、緑間くんは変わらずスリーポイントシュートを撃ち込み続ける。いくら体力増強に励んだからって、これはちょっと撃ち込みすぎなんじゃないの?と思うくらいに。火神くんも体に相当負担が掛かってるみたいだけど、火神くんも緑間くんも「相手より先に音を上げてたまるか!」と根性と男気だけで自分の限界を凌駕しようとしてるようだった。ここまで来たらもうなりふりかまってられなくて、とにかく点を決めて決めて決めまくるしかない。

残り時間が30秒もないところで伊月くんの持っていたボールがスティールされて、このままコートの外に出てしまったら秀徳のボールになってしまって勝ち逃げされてちゃうってときに黒子くんがボールをキャッチした。消えるドライブで高尾くんを抜いた黒子くんが出したパスの先は木吉くんで、ダンクを決めようとした彼の後ろから緑間くんの腕が伸びる。辛うじて放ったボールはゴールに弾かれて、ディフェンスプッシングのペナルティで誠凛にフリースロー2本が与えられた。ってことは、2本決められたら誠凛の勝ち、もし外れても残り数秒のこの場面じゃあリバウンドを死守しなくちゃ終わりだ。「楽しんでこーぜ、です」と言った黒子くんに便乗して木吉くんの緊張が少しでも解れるようにグッと親指を立てるとちょっとだけ微笑んでくれた。うわあ。嬉しい。癒される。癒されるんじゃなくて癒さなきゃなんないんだって分かってるけど癒される。……頑張って欲しいな。

まずは一投目。……決まったー!やったー!同点だよ!そして、二投目、これで全部の決着がつ「リバウンドォ!!」大坪さんが掴もうとしたボールを後ろから火神くんが奪い取った。そのままゴールに押し込もうとしたところで、

「試合終了ー!」

ブザーが鳴り響く。延長戦の規定はないはずだから、104対104で両者引き分け、だ。体の力が一気に抜けた。いや、でも、こうしちゃいられない。

「小金井くん!ヘーイ!」
「ヘーイ!」

小金井くんと熱いハイタッチ(めちゃくちゃ良い音が鳴った)を交わしたテンションのまま帰ってくる選手にハイタッチを求めると、仕方ねーな、って顔をしながらも受け入れてくれた。日向くんはしてくれなかったけど「はしゃぎすぎだダァホ!」って言ってたから照れ隠しなんだなーと都合よく解釈させてもらうことにする。わざわざ背をかがめてくれた木吉くんの手はやっぱり大きくて、勢いよくいってしまったあたしの手が反動でものすごいダメージを受けた。伊月くんはダメージを受けた一部始終を見ていたらしく無傷の手のほうが触れるようにしてくれた。さすがのイケメンである。水戸部くんはハイタッチした後に飴をくれた。いつも思うんだけど本当にどこから出してくるんだろ。ジャージの中に仕込んでるのかな。火神くんにハイタッチしようとしたら、火神くんの体越しに秀徳の姿が見えたから手を振ると一瞬だけ緑間くんが笑ってくれたような気がした。見間違いだとしても貴重すぎる瞬間…!後でバナナ余ったら差し入れしてあげよう。さらっと通りすぎようとした黒子くんの腕を掴んでドリンクを押し付けて引き止めた。言いたいことは山ほどあるのだ。

「黒子くん、あの、あれ、バニシングドライブ!凄かった!っていうかやっぱり先に見せてほしかったよ心臓に悪い!めちゃくちゃ驚かされたよ!お疲れ様!後でバナナあげるからそれ飲んでちゃんと体休めてね」
「……そんなに一気に話すと舌を噛みますよ」

これはまさかの照れ隠し二人目なのか。可愛い…!可愛いな本当にもう…!頭に手を伸ばすとちょっと嫌そうな顔をされたからハイタッチを求めると応じてくれた。ゆるい力でやってくれたのか全然痛くない。今ならやれる気がする!と勢い余って監督に抱き着くと「あんたはこんなところで油売ってる場合じゃないでしょうが!さっさと選手のケアしてきなさい!」って凄い力で引き離されて、照れ隠し三人目か、と心の中で呟いた。

、応援しすぎて声枯れてる」
「ありがとー」

さりげなくあたしにもペットボトルを渡してくれたつっちーの方があたしよりも断然マネージャー的な気配りとか仕事をこなしてくれてるんじゃないか、と思ったのは内緒だ。

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