Machine-gun Talk! 61

金髪になっていた日向を高校に入って初めて見たときは本当に衝撃的で、「全然バスケ部っぽくないよ!」と言っても「バスケはもうやめた!」と返されるだけ。きつい冗談かと思えばどうやら日向は本気でバスケを辞めるつもりだったみたいで、中学のとき一勝も出来なかった話を持ちだされては、もうそれ以上バスケの話を日向の前で出す訳にはいかなくなってしまった。しばらく閉口したままでいると、今度はオレではなくバスケ部を創部したいという大男(木吉というらしい)が「一緒にバスケやろうぜ」と言って日向につきまとうようになった。知らないうちにえらく気に入られてしまったみたいだ。

オレはバスケが好きだし、バスケをやりたいと思ってる。だから日向の前で木吉の持ちだしたバスケ部の話を承諾した。これで少しは日向がまたバスケをやりたいって思ってくれたらな、という気持ちがあったことは否定しない。でも駄目だった。それでもバスケ部を創部することにこだわり続ける木吉に向かって、「こりないね」と言葉を投げかけてみる。てっきり皆でワイワイやれたら勝ち負けなんて関係ない、ってタイプかと思いきや、オレの予想を大きく裏切り木吉はバスケ部の活動に対してかなり真剣に取り組もうとしているようだった。ホント、つくづく日向のテッペンがアホらしくなるよ。で、ここからオレと木吉のバスケ部創設のための部員探しが始まる訳なんだけど、

「あ、もしかしてそのときあたりでコガくん達が加わったの?」
「そう。コガのやつ初対面でいきなり何て言ったと思う?」
「えー……何だろ。コガくんのことだからいきなりハイテンションな感じかな?」
「トラベリングのこと『3歩歩くとサイクリング!』って言ったんだよ」

どうもはコガの動向がいちいちツボにハマるらしい。それまでオレに向かい合うように座りながら昔話を真面目に聞いていたはずなのに、サイクリングのくだりを聞くや否や隣りに座っていた降旗の背中をばしばし叩いて笑いだした。あのときキメ顔をしながら自信満々に言われたオレの身にもなってほしい。この後オレ達バスケ部は可愛いマネージャーがほしい!というコガの熱烈な意見を取り入れて監督を勧誘したり、ファミレスで日向とばったり会って逃げた日向を木吉が追いかけていったり、監督にどうにかしてオレ達の本気を分かってもらうために屋上から「日本一を目指す」と宣誓したりした。気持ちが伝わったのか最終的には日向も監督もバスケ部に加わってくれて、日向がキャプテンになって、つっちーが加わって。そういう経緯を辿って誠凛バスケ部は創設された訳なんだけど。

そしてここからは問題の木吉の怪我について言及しなくちゃいけなくなる。ちらりとの表情を窺うと「そういや全裸で告るとかいう話もあったねー」なんて言いながら一年三人とにこやかに談笑していた。この話をすればは悲しむだろうか。悲しむだろうな。そして木吉や日向やオレ達のために憤るだろう。出来ればにはマシンガントークのまま能天気に笑っててほしいんだけど、そういう訳にもいかなさそうだ。何よりと降旗と河原と福田がオレ達の口から事実を聞くことを望んでる。携帯を開いて日向と木吉以外の二年に召集をかけた。とてもじゃないけどオレには荷が重すぎる。どうかこの話をした後でもがそのままでいてくれますよう祈るしかなかった。

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