Machine-gun Talk! 70

ついにやってきてしまいました温泉当日。全治二週間だと言われた捻挫はかなり回復しているものの、まだ完治していない。腫れもかなり引いて痛みも収まってきていたから温泉入る気満々だったのにも関わらず、念のためだと監督に止められてしまった。よって何もすることがない。お預けをくらった気分である。腹いせにフルーツ牛乳を買って飲んでみたけれど、あの感動は風呂上がりに飲むからこそのものなのだと改めて実感した。温泉入りたかったのになあ。

マッサージチェアに座ってたらポカリを持った火神くんと出くわした。上がってくるの早いねえ。聞くとのぼせた黒子くんに付き合って早めに上がってきたらしい。そんでポカリが飲みたいと言った黒子くんのために外の自販機にポカリを買ってきたんだ、と。火神くんって見た目おっかないけど何だかんだで面倒見いいよね。そうか、黒子くんのぼせちゃったのか。いつもシェイクやら何やらでお世話になってるお返しにコーヒー牛乳でも奢ってあげようかしら。マッサージチェアから降りて二人がいるはずの休憩所に向かうと何故かそこから火神くんでも黒子くんでもなく青峰くんが姿を現したもんだからびっくりした。めっちゃくちゃびっくりした。どうしてここにいやがる!

「……お前かよ」

あからさまにがっかりした顔しないでくれるかな青峰くん。そしてどうしてここにいるのかな青峰くん。ふと彼に貸しがあったことを思いだし、掌を前に突きだすと怪訝そうな顔をされた。

「何だその手は」
「80円。前に120円借りたけど丁度なかったから200円渡したじゃん」

忘れたとは言わせないぞ。面倒くさそうな顔をしながら青峰くんは財布を取り出した。うん。80円丁度、確かに頂きました。コーヒー牛乳を買うにはあと少し足りないけれども。財布を仕舞いながら青峰くんは「そういやお前まだ聞いてねーんじゃねーの」と言う。聞くって何をだ。

「ウィンターカップ初戦の相手がオレだってことだよ」

……はい?オレってことはつまり桐皇学園ってことで、え、えええええ……。一回戦で同じ県同士の代表校はあたらないはずじゃなかったっけ。驚きのあまり固まっていると青峰くんは「じゃあな」と言って歩き出した。もう行っちゃうのか。いや、行ってくれて全然構わないんだけど。

「あのときの借りは絶対返すからね!」
「練習中に捻挫するような鈍くせえ奴には負ける気がしねえ」
「何で知ってんの!?」
「さつきから聞いた」

桃井ちゃんそんな情報まで集めなくていいよ恥ずかしいから。「せいぜい気をつけろよ」と言いながら青峰くんは今度こそ背中を向けて歩き出した。今の心配してる声色じゃなかったよね絶対あたしのこと馬鹿にしてたよね。釈然としない気持ちを抱えながらコーヒー牛乳のボタンを押す。あ。黒子くんコーヒー飲めるのか聞くの忘れた。飲めないって言われたら火神くんにでも押しつけちゃえばいいよね。

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