Machine-gun Talk! 72

いきなりだが、監督がウィンターカップ開会式終了直後だというのに怒り狂っている。…何故かって?単身アメリカに武者修行しに行った火神くんが時差のこと忘れてたせいで未だ会場に到着していないからだよ!馬鹿野郎!

「ねえコガくん携帯で写真撮って」
「いいよー」
「小金井先輩、写真ならボクが」
「何言ってんの黒子くんも一緒に写るんだよ、一年生全員いなきゃ記念にならないでしょ」

逃げようとした黒子くんを後ろから掴んで引き止める。大した抵抗もせずに大人しくピースしているのを見てにんまり笑うとその瞬間にシャッターを切られて少し後悔した。絶対変な顔してた今。まあ滅多に撮れない黒子くんとの写真も撮れたしいっか。あとで監督の機嫌がいいときにでも二年生全員とも一緒に写ってもらおうっと。コガくんから携帯を返してもらって画像を確認する。良かった目開いてた。

「火神くんはどうするんですか」
「プリクラよろしくあとで落書きペンみたいなの使って書き足そうかなと思う」
「…………」
「冗談だよ何で『うわあコイツまじかよ』って顔してんの」
さんならやりかねないな、と思ったので」
「やんないよ!?」

火神くんは会場に来たときにでもまた撮ってもらおう。そのときになってもっかい黒子くんが写ってくれるか、って聞かれたら微妙だけど。一年生と撮って、二年生とも撮って、後で知り合いに会ったらその都度写真撮ってもらおう。こんな機会二度とないかも知れないしね!来年こそ女バスとしてこの舞台に立ってやるっていう野望を密かに心の中で燃やしてたりもするんだけどね!今年最後にして最大級のタイトルだからって浮かれすぎかもしれない。いやでも、こんな大きい試合会場に来て全国クラスの選手がうじゃうじゃいたら浮足立つしかないじゃないか。

……そういやキセキの世代ってこの大会で全員集合してるんだよね。勝ち進んでいけばいずれ当たるんだよね。初戦は青峰くん擁する桐皇学園だしね。黒子くんはあんまり気にしてなさそう……な訳ないか。一度負けた相手だ。しかもまだあたしが会ったことのないキセキの世代のキャプテンの赤司くんっていう子もこの大会には出場しているのだ。

気にするなっていう方が無理かもしれない。

そんなことを考えていた矢先、黒子くんが「赤司君に会ってきます」なんて言い出した。呼び出しがかかったんだ、と。え、それ一人で言って大丈夫なの赤司くんって良く知らないけどおっかない人なんじゃないの。あの曲者揃いのキセキの世代をまとめてたキャプテンだったっていうし。大丈夫なの本当に。

少し不安を覚えたのはあたしだけじゃなかったらしい。監督は降旗くんを黒子くんに同行させた。そして無事に呼び出しとやらから帰ってきた彼らはといえば……

「えっ、火神くん!?いつこっち着いたの!?着いたら連絡してねってちゃんと言っといたのに!先輩に無断でアメリカに武者修行しに行って開会式遅刻って何か色々ぶっとんでるよね君!そんでもってどうして頬っぺた怪我してるの絆創膏あげようか!?」
「先輩一気に喋られるとどれに返事したらいいか分かんねーんでやめろ、……です」

増えてた。黒子くんと降旗くんに加えて赤髪の図体のでかい男が増えてた。出たよこの拙くて不自然な敬語!一年生二人が出ていって二年生とも記念写真を撮り終えた後、控室で試合の準備をしているところで控室に入ってきたのは我が校が誇る天才ルーキー、火神大我その人だった。でも何でマジで頬っぺたのとこ怪我してるの。アメリカ行ってる間に一体何してたの。修行か。

「赤司って奴に会って、そんで……刺された、んすよ」
「刺された!?」
「っつってもハサミは避けたんで軽くここんとこかすっただけで済んだんっすけど」
「かすっただけで済んだ、じゃないよ!ハサミって!何それ赤司くん……っていうキセキの世代のキャプテンだった子?と何がどうしたらハサミで刺されることになるのさ!」
「だから刺されたんじゃなくて軽くかすっただけっつーか……」
「いやいや重要なのはそこじゃなくて!とりあえず消毒!そんで絆創膏!」
「そんな大袈裟な……」
「むしろ大袈裟にしなきゃいけない大事件だとあたしは思うよ!!」

何故かしれっとしてる火神くんよりも黒子くんの方がしゅんとしているように見えたのは気のせいなんだろうか。というより赤司くんってどんな子かと思いきやハサミ……ハサミって……ちょっと洒落にならんぞキセキの世代。

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