Machine-gun Talk! 73

桐皇学園との試合をする前にやらなくちゃいけないことがあったのを思い出した。

「やっほーまこっちゃん、こないだのジャージ返しにきたよ。君が誠凛の試合見にきてくれるなんてもうお姉さん思わず感涙しちゃうね!心ゆくまで応援してくれて構わないからね!」 「誰がお前らなんか応援するかよバァカ。早く帰れ次の試合すぐなんだろ」

拝借していたジャージ(ちゃんとクリーニングに出した)を入れた紙袋を花宮に向かって差し出すとひったくるようにして奪われた。何だよつれないなあ。つられても困るんだけどさ。

「言われなくてもすぐ戻るよー何しろ対戦相手はあの桐皇学園なんだしさ。まあまこっちゃんが誠凛を応援しようと桐皇を応援しようとどっちだっていいし関係ないことなんだけど、ジャージのお礼だけはまこっちゃんに言っておこうかと思って」
「お前はいちいち余計なことを…返さなくていいっつったろうが。あとその名前で呼ぶのやめろ」
「そんなこと言われても花宮に新しいの買って返してあたしがこのサイズの着ててもジャージに着られてる感が満載になるだけだし。ちゃんとクリーニングに出してから返すあたしに感謝の言葉を述べる…まではいかなくとも労いの言葉をかけることくらいも出来ないのかね君は」

両手を広げてやれやれ、というポーズを取りながら言ってやると丸めた紙のようなものでスパーンと叩かれた。暴力だ!暴力!暴力反対!

「うるせえお前それ以上騒ぐと今度はスリッパでぶん殴るぞ」
「スリッパ!?あんた絶対叩き殺す勢いでぶん殴るじゃん!絶対嫌だ!暴力反対!」
「オレはお前に言葉の暴力振るわれてんだよ!気色悪いあだ名で呼ぶのやめろっつってんだろうが!」
「振るってないんですけど!まこっちゃんって結構気に入ってるんですけど!いいじゃん呼びやすくて」
「自覚も悪気もねえって恐ろしいなオマエホントに…。そんなんだからいつまで経っても口だけ達者で実力不足な弱小バスケ部のままなんだろ」
「何さそれ誠凛のこと言ってんの!?」
「お前個人のこと言ってんだよ」

誠凛のことを言ってようが自分個人のことを言われていようが、どっちにしろ腹が立つことに変わりはなかった。確かにあたしはバスケ下手くそでまだまだ練習不足で、弱小バスケ部そのものなんだけども。もうちょっと言い方ってもんがあるんじゃないのかなこの悪童め。それにあたしはこんなところで油を売ってさらに花宮からの喧嘩を買っている場合ではないのだ。そろそろ戻らなければ。

「確かにあたしは下手くそだけど今日の誠凛が霧崎第一とやったときと同じだと思ってたら大間違いだから!見てろよ!そんでもってあんたあたしがバスケしてるとこ見たことないくせによくそんな上から物言ってくれるよね!試合の後でハートマーク一面にいっぱいついたメール送りつけられたくなかったら今すぐさっきの発言を撤回することを要求す」
「気持ち悪いこと言ってねーでさっさと行け」

また鉄拳を食らわされるのかと思いきや蹴られた。脛狙いやがったこいつ……あり得ん……。もしこのまま試合鑑賞するつもりなら意地でも試合終わるまでに見つけ出して事ある毎に手振ってやる。本当にハートマーク送りつけるぞ。メアド知らないけど。

「おい!」

踵を返して会場に戻ろうとした矢先、後ろからかけられた花宮の声に足を止めた。そして聞こえてきた台詞に耳を疑う。

「誠凛もお前もオレに潰される前に余所の学校に負けんじゃねーぞ。絶対勝ってこいよ」

何だなんだ。もしかして鼓舞しようとしてくれてるつもりなのか誠凛を。一体どういう風の吹き回し……

「……なんて言うわけねェだろバァカ。負けたときのオマエの情けない面楽しみにしてるぜ」

ですよねー!あの花宮が素直に誠凛を応援する言葉をかけてくれる訳がないよねー!絶対勝ってあいつに目に物見せてやる!見てろよ、という意味を込めてコートを指し示すと振り払うような仕草をした後ゆっくり親指を下に向けられた。にやにや笑う顔に余計腹が立つ。ああもう、やっぱりこいつ嫌いだ!

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