Machine-gun Talk! 75

日向キャプテンの新技、その名もバリアジャンパーが華麗に決まった。

「痺れるー!誠凛のキャプテン痺れるー!バリアジャンパー超痺れるー!もっとやってもっと見せてメガネ外してもっとやってー!」
「うるせえ試合集中させろ!」

怒られてしまったので黙ります。桐皇に対する歓声が凄すぎて圧倒されちゃうといけないから黄色い声をあげられてる感じを演出したかったんだけど失敗に終わってしまったみたいだ。バリアジャンパーって名前凄いよね。不可侵のシュートって書くんだもんね。日向キャプテンは本当に今が絶好調のようで、二連続でシュートを決めていた。桜井くんのディフェンスが追いつけていない。このままガンガンいけたら苦労しないんだけどねえ。

桜井くんの十八番、クイックリリースが決まった。今のはちょっと強引だった気もするんだけど、桜井くんってあんなプレーする子だったっけ。物凄く負けず嫌いっぽいんですけど。「だってボクのほうがうまいもんっっ」…あー。分かる。四六時中キャプテンに怒鳴られてるあたしだから分かる。分かってしまう。今のは確実にキャプテンの苛々のツボを刺激したな!

案の定キャプテンは桜井くんのさっきの態度がお気に召さなかったみたいだ。バリアジャンパーにクイックリリース、試合の展開はスリーの撃ち合いにもつれ込む。残り時間が少ない場面で桐皇がスリーを決めた。すかさず黒子くんのバニシングドライブが繰り出される。久々に見たけどやっぱり見てても気持ちいいよねこのドライブ。相手チームの表情が何とも言えないよね。最後は日向キャプテンのブザービーターで同点にまで追いついた。今日のキャプテン絶好調だなホントに。

ところが、だ。第二クォーターに入って状況は一気に逆転する。大事件が起きた。黒子くんと青峰くんの異色のワンオンワンにてバニシングドライブが破られ、さら畳みかけるようにして改良型イグナイトパスを繰り出すも片手で受けとめられてしまった。まさしく誠凛の切り札だったこの二つの技を破られたショックは大きい。

「そりゃムダな努力だ」

かつての相棒に向けて失望したとはっきり告げた青峰くんの存在はコート上でも絶対の存在感を放っていて、まさしく君臨するという言葉がぴったりだった。これがキセキの世代のエースの力なのか……。こういうときに限ってなかなか時計止まらないんだ。焦る気持ちを抑えて両手をぎゅっと握った。

たかだか一分程度で6点差をつけてくるほど、桐皇のエース青峰くんの力は絶大なのだ。黒子くんが止められた今、突破口は見つからないままだった。ひとまず降旗くんにテーピングをしてもらっている黒子くんのほうを確認する。俯いたまま、ベンチに座っていた。……うん。

「福田くんちょっとの間だけこっちお願い。ホントちょっとだけでいいから」

救急セットを床に置いて、黒子くんの後ろに立つ。頭を撫でるべきか背中を叩くべきか声をかけるべきか迷った末に背中を小突くことにした。

「……さん、今は少し」
「んー、分かってるよお疲れ様。責めてるわけでも励まそうってわけでもないからね。独り言だから聞き流してくれていいよ。あと30分くらいだけ一緒に頑張ろっか。ちなみにこっちから顔見えてないから心配しなくて大丈夫。あとでタオルと先輩の胸貸してあげるね」
「……はい」
「よし、火神くんあとはよろしく」

後ろから火神くんが出てきたから最後の言葉は黒子くんに聞こえないよう小声で言っておいた。聞こえちゃったかもしれないけど。あとのことは全部火神くんが言ってくれるはずだ。「みんな信じてるぜ」のところで大きな声で勿論あたしも信じてるよ!と言いたい衝動をグッと堪えて、作業に戻る。誠凛のシックスマンはこのまま終わる器じゃないってちゃんと信じてるよ。だから泣かないでほしい。たまらなく胸が痛くなった。

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