Machine-gun Talk! 84

ウィンターカップ4日目、3回戦。森園北に勝利して準々決勝進出を果たした誠凛の対戦相手は陽泉高校に決まった。つまりそれは、キセキの世代の紫原くん、そして、氷室さんとの直接対決がとうとう実現することを意味しているわけで。3回戦が終わった後すぐに陽泉の研究をするべく火神くんの家に集まって試合記録を観ていたみんなの顔に衝撃が走る。あたしだって信じられない。これ本当にバスケの試合なの……?練習試合とか、圧倒的に実力差のあるチーム同士の試合ならともかく、これはウィンターカップでの記録なはずだ。それなのに、こんなスコアって。あり得るのか。実際にあり得ているからこうして記録に残されているんだけど。2試合連続無失点。青峰くんがいた桐皇とは対照的な超ディフェンス型チーム。それが、誠凛が次に対戦することになる陽泉高校のプレイスタイルだった。

「黒子くんシュートの特訓の成果どうなったの?青峰くんにちゃんと教えてもらえた?」
「はい。試合楽しみにしててください」
「今特訓の成果を見せてくれてもいいんだよ。ていうか見せて見せて」
「……いえ。さんには驚いてもらいたいので」
「なんか前にもそういうこと言ってなかった?」
「そうでしたっけ」

今絶対はぐらかしたでしょ。黒子くんはどうやら新しい技や技術を手に入れる度に試合まであたしには内緒にしておくつもりらしい。この秘密主義め!別に言いふらしたりしないんだから教えてくれたっていいじゃん!そんなに信用ないかあたしは!青峰くんとシュート練習って気になるに決まってんじゃん!いくら訴えても黒子くんには通じないことはこれまでの経験で分かってるからこれ以上は言わないけど!試合頑張ってよね、という意味を込めて背中をバシーンと叩いてあげると勢いが良すぎたのか黒子くんがつんのめる。えっ黒子くん思ったより軽かった!ごめんごめん!

「痛いです」
「ごめんちょっと力入りすぎた」
「……緊張してるんですか?」
「そこそこね!そういう黒子くんはいつも通りだね」
「……試合でも、いつも通りのことをやるだけですから」

わあ格好いい。さすが全国経験者だ。言うことが違う。

「……黒子く」
「おい黒子、!遊んでねーでさっさと行くぞ!」

もう一度頑張ってねと言おうとしたところで日向くんの怒号が飛んできた。遊んでるって心外だな。キャプテン絶対あたしのこと邪魔しかしない奴だと思ってるよね。そんなことないはずなんだけど。気合い入ったチームみんなの顔をぐるりと見回した。……よし、これ以上どやされる前にお茶作りにいってこようっと。今日も絶対熱い試合になるはずだもんね。

準々決勝、つまりベスト8ともなると注目度は桁違いに跳ね上がるらしい。創部2年目、全く無名のチームだった誠凛も登場するやいなや観客からの歓声に迎えられた。すご……!なんかテレビいるし!思わず圧倒されると監督に背中を叩かれた。痛い!ああでもそうだ、ここにいるのはまぐれぎゃなく実力なんだから、堂々としてなくっちゃね。

気合いを入れ直したところで向かいの方からまたもや歓声が上がる。陽泉高校のお出ましだ。…こうして見ると本当におっきいんだけどインサイド3人とも2メートル超えてるってマジ…?付いた名前が絶対防御(イージスの盾)だって。いいなぁ。桐皇といい陽泉といい何でこんなに格好いい二つ名ついてんだろ。誰が付けてるのか知らないけど誠凛にもなんか付けてくれないかなぁ。ルーキーとか期待の新星とかしか呼ばれたことないもんね。もっとこう……インパクトのある格好いい名前をさ。必殺技みたいなやつがさ。欲しいなぁとね、思うわけですよ。ねえ小金井くん。さん付けたらいいんじゃない?ってそんな投げやりな!自分で付けるのと人から呼ばれるのとでは全然違うんですけど!あ、そうこうしてるうちにもう試合始まっちゃいそうだ。今日は最初から黒子くんと火神くんを投入して、最大火力のフルメンバー。陽泉が絶対防御なら、ウチはそれを崩せるまでガンガン攻撃あるのみってね!

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