Machine-gun Talk! 85

両チーム全員揃って礼をしてからそれぞれ握手を交わす様子をベンチから見守る。日向キャプテンも、めちゃくちゃ大きいってわけじゃないけど決して華奢ではないはずなのに相手チームのキャプテンと一緒にいると小柄なように見える。物凄い迫力だ。本当に同じ高校生なの?オッサ……いや、えーっと、20代じゃなくて?紫原くんもそうだけど、何食べたらあんなに育つんだろう。同じ人間のはずなのに不思議だ。

始まる前には色々と思うところがあったような火神くんも、今はもう吹っ切れたような顔をしてそこに立っている。あの顔ならもうきっと大丈夫だろう。うちのエースの顔してる。

試合開始の笛が鳴った。まずはジャンプボール。ここでやっぱり紫原くん出してくるのか…!高い…!紫原くんが触れたボールを相手チームの人が掴んで、まずは陽泉ボールからスタート……と思った矢先、ピーッともう一度笛が鳴って試合の動きが止まる。ジャンパーヴァイオレーション。つまり、紫原くんボールが最高点に達する前に触ったってこと……?何それ。今の見る限り最高到達点だけで言えば火神くんより高いんじゃないのか。あの身長に加えてウイングスパンも長いって、本当に日本人離れしてる。体格だけでもほんとに反則めいてる!

紫原くんのおかげで誠凛ボールから始められるのはラッキーだけど、相手は今大会未曾有の無失点を誇る陽泉高校だ。サクッと一本決める、なんて展開にはもちろんならないだろう。だけど、警戒ばかりしていちゃ何も始まらない。だったら、初っ端からガンガン攻めていくのみ。スピード勝負の超高速パスワーク、ゴール前には誰もいない絶好のチャンス。まずは決めちゃえ日向キャプテン!

「ヒネリつぶすよ」

とても身長2メートルの人間とは信じられないようなスピードでゴール下へ追いついた紫原くんにシュートがブロックされてしまった。嘘でしょ、あれだけ早く回したパスに一瞬で追いつけるなんて。体が大きくて手が長いだけじゃなくスピードも兼ね備えてるって、そんなの最早チートじゃん。チート級だからこそ「キセキの世代」なんて呼び名がついたんだろうけど、それにしてもだ。ハイスペックにも程がある。これまでに対戦してきたチームはきっとこう思ったはずだ。こんな選手がいるチームと一体どうやって戦えばいいんだろう、って。今大会未曾有の無失点、なんて大げさだなぁと思っていたけれど、このチームからは一点をもぎ取るのはめちゃくちゃ大変かもしれない。

……そう、あらゆる不可能を可能にしてしまう幻のシックスマンこと黒子くんがいないチームなら、の話だけどね!

黒子くんがコートを横切る超ロングパスを出した。受け取ったのはもちろん我らのエース、火神くん。よっしゃ火神くん!先取点決めちゃえー!

盛り上がる誠凛ベンチ。だけど、その次に訪れるはずの歓喜の瞬間は来なかった。ゴールを狙った火神くんの手からドゴッと音を立ててボールが弾き落とされる。弾き落としたのは、もちろん紫原くんだ。嘘でしょ。さっきまででも十分チート級だったっていうのに、まさか反射神経も良いっていうの……?

3Pラインより内側は全部が守備範囲。それが4人目のキセキの世代、紫原敦の能力らしい。シュートを打たれたら最後、絶対に点を決められる緑間くんのときとは真逆だ。どんなに攻めても絶対に止められてしまう攻撃、まさに鉄壁の防御。イージスの盾、なんていう名前は大げさでもなんでもなかったらしい。開始早々から不穏な空気が立ち込める誠凛ベンチで、ただひたすらに拳をぎゅっと握った。

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