Machine-gun Talk! 86

手も足も出ないという言葉はまさに、今このとき使うためにある言葉なのかもしれない。

火神くんのシュートが紫原くんにブロックされた後、先取点を決めたのは陽泉の方。火神くんと木吉くんの2人がかりでもオフェンスリバウンド取られるなんて、さすがは2メートル超えの身長を誇る鉄壁のディフェンスだ。しかも陽泉の攻撃のターンになっても紫原くんは一向に自陣のゴール下から動こうとしなくて、……どうも攻撃には参加しないつもりらしい。ゴール下が空かない限り、誠凛が得意とするカウンター攻撃は陽泉には効かない。つまり超攻撃型のうちとはすこぶる相性が悪いってことだ。

中がダメなら外から、ってことで日向キャプテンがスリーの態勢を取る。そこにすかさず飛び込んできたのは向こうのキャプテンだ。うっわ凄い圧…コートの外からでも分かる。気圧された日向くんのスリーがわずかにゴールから外れた。外れたボールを火神くんが取りに行くけれど、ゴール下にはそう、彼が待ち構えている。紫原くんが掴んだボールが陽泉の選手に渡って、18点目。誠凛は未だゼロゴールのままだ。

第一クォーター、残り15秒。18対0の表示に冷や汗が滲む。ここまで歯が立たないなんて。正直、陽泉の守りの堅さは想像以上だ。激戦を勝ち抜いたウィンターカップ出場校なんだから、もちろん強いに決まっているし、決してなめていたわけじゃない。だけど、それにしても、ここまで点が取れないものなの……?

ボールは未だ陽泉サイドにある。ここでもう1ゴール決められたら、うちとのスコアは20点差だ。第2クォーターから取り返すとなると、20点差を埋めるのは精神的に大きなプレッシャーになる。せめて18点差に抑えたい。そのためには、なんとしてもここで止めなくちゃいけない。

氷室さんのシュートを火神くんが触った。凄い!さすがうちのエース!だけど、このリバウンドを決められてしまうと20点差でうちがピンチになるのは変わらない。何としても止めなくちゃ、だけど、火神くんがいないゴール下を守るのは日向キャプテンと木吉くんだけだ。……お願いリバウンド取って!祈るようなベンチの視線を背中に受けながら、陽泉の2メートル超えの選手2人にがっちり挟まれている木吉くんが吠えた。

木吉くんが片手でボールを掴んだのを見て瞬きをする。えっ何、木吉くんいつのまにそんなこと出来るようになったの!?

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