Machine-gun Talk! 98

黒子くんと火神くんのバッシュが二人同時に壊れたらしい。よりにもよってウィンターカップ準決勝当日に。タイミング最悪すぎでしょ。あれだけ酷使してたらそりゃ壊れるのも当たり前のような気がするけど。というわけで、あたしたち二年生はバッシュを買いに行った二人と、そして諸々の備品の買い出しに行ってくれた降旗くんたちとは別の電車で会場へと向かっている。何か二年生だけでこうしてると修学旅行みたいだよね、と言うと浮かれすぎんなよと日向キャプテンに釘を刺された。やだなあキャプテン、さすがにウィンターカップも準決勝とまでなればあたしだって分かってるってば。

千駄ヶ谷に到着したことを知らせるアナウンスが車内に流れる。降りなきゃ。通勤の途中らしいサラリーマンに背中を押されながら電車を降りる途中、地面の出っ張りに足を取られた監督がよろめいた。ちょっと監督大丈夫!?

「女の子はちゃんと守ってあげてね?」

こっちが手を差し出すよりも先に監督を受け止めた男の人は日向くんたちに向かってにっこり笑って言った後、あたしたちがこくこくと頷いたのを確認して立ち去っていった。めっちゃ背高かったけど、綺麗な人だったな。……それに、ちょっとしか見えなかったけど、あのジャージって洛山高校のだよね?会場の方に向かって歩いていったし。あの人も選手なんだろうか。だとしたら洛山ってあの赤司くんがいるところだよね、初対面でいきなり火神くんにハサミ使ってきたっていう……。

今日の準決勝、あたしたちの試合は夕方からでその前に秀徳対洛山の試合が予定されている。今日勝った方が、次の決勝であたしたちと戦うことになる。いや、もちろん今日の準決勝で勝ったらの話だけど。黄瀬くんや笠松さんにそう簡単に勝てるとは思ってないけど。秀徳とは、特に緑間くんとは「ウィンターカップでまたやろう」って約束があるから絶対に戦いたいし、でも洛山も赤司くんがいるってことはそう易々と負けるようなチームじゃないんだろうし。どうなるんだろう。ブロックが違うから洛山の試合はまだ見たことないんだけど、どんなチームなのかな。キセキの世代のキャプテンって、どんな感じなんだろう。黒子くんはあんまり昔の話はしたがらないから写真とかも見せてもらったことないんだよね。まずは目の前の相手の海常に集中しろって怒られそうだけど、どうしても気になっちゃう。

洛山のことが気になっていたのはあたしだけじゃないらしい。無事にバッシュと備品を手に入れて会場で合流した1年生たちが日向キャプテンたちに「洛山ってどれぐらい強いんですか?」と聞いたのを内心ナイスと思いながらキャプテンの言葉に耳を傾ける。

古豪とは聞いていたけれど、ウィンターカップ開催第一回から出場し続けている超強豪高校っていうのは知らなかった。優勝回数は全校中最多で、最近では5年間連続三大タイトルを総ナメしているらしい。そりゃキセキの世代のキャプテンもいるんだからめちゃくちゃ強いんだろうなと思ってたけど、そこまでとは。

でも、本当に驚くべきなのはここからだ。

「一言で言えば高校最強だ。そしてその中でも今年は過去最強の布陣と言われている」とはっきり言ったキャプテンの言葉にゴクリと唾を飲み込む。高校最強。分かってはいたけれど、改めて言われるとその言葉の重みがずっしりとのしかかってくる。だけど、今年の洛山が歴代最強と謳われているのは、キセキの世代のキャプテンがいるからだけじゃない。木吉くんや花宮と同じ、無冠の五将。その残りの三人が、揃いも揃って洛山にいるというのだから。そしてそんな彼らについたあだ名が開闢の帝王。て、帝王……!めちゃくちゃ格好いい………!

「またさん自分も二つ名つけられたいとか思ってるんじゃない?」
「えっ何でバレたのコガくんもしかしてあたしの心読める感じ?」
「オレじゃなくても分かると思うよ」

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