Machine-gun Talk! EX11

どうやら人間とは普段へらへらとしてふざけたことばかりしている奴の方が一旦落ち込むと面倒くさくなる傾向にあるらしい。いや、オレは『人間とは』なんて語れるほどまだ生きていないし悟っている訳でもねーんだけど。オレの人間観なんてこの際どうだっていい訳で。重要なのはまずこの目の前のコイツをオレはどうしてやったらいいのかってことだ。バスケ以外での関わり方なんぞさっぱり分からん。

つーか何でコイツこんな泣いてんだよ。

とりあえずカントクに連絡する。……。連絡していいんだよな……?何がどうなって今こういう状況に陥っているのかオレには全然分からねえもんだから説明のしようがないんだが。携帯とを交互に見て頭を悩ませること少し。よし、連絡しよう。オレにはキャプテンとして部員を部活に参加させる義務があるはずなのだ。それに、もしかしたらカントクが何とかしてくれるかも知れん。そんな淡いオレの期待はあっという間に打ち砕かれた。あろうことかカントクはオレに全てを丸投げしてきやがったのである。

「……カントクから伝言。落ち着くまで練習来なくていいからさっさと復活しろ、だとよ」

恐る恐る声をかけるとは俯いたままコクリ、と頷いた。コイツ本当に大丈夫なのか。そう思って「大丈夫か」と声をかけてみるも、返事は返ってこない。あーこれは相当きてんな。何があったか知らねえけど。言いたくねーのかもしんねーし。しかしこのまま放って部活に行く訳にもいかない。コイツにもしてもらわないといけない仕事があるし、まあ、もし仮に仕事がなかったとしても(落ち込んで?)泣いている人間を一人で放置するほどオレは非情な人間ではない。と思いたい。とりあえずオレは、……どうしたらいいんだろうか。

ひとまず本人に事情を聞かないことには何も始まらないだろう。隅っこの方で体育座りっていうのか?まあ、とにかくそういう感じで膝に顔を埋める姿勢をとっているの近くに座って様子を見る。

「どうしたんだよ。何か嫌なことあったのか?」
「……別に、ない……」

お、返事した。ないことないだろうが。現にこうやって泣いてる訳だし。

「じゃあ何で泣いてんだよ」
「……………」

無言で首を振られた。言いたくないってことなんだろうな。男は女に比べて(比較的)泣くことが少ないからオレはあんまり気持ち分かってやれねえけど。普段あんだけ楽しそうにしてる人間のこういう一面を見せられると嫌でも動揺してしまう訳で。

「嫌なことあんなら今のうちに言っとけよ。今ならオレが聞いてやるから」
「……うん」

それからはぽつりぽつりと何かを喋り始めたのだけれど、泣いてる所為か声がくぐもってかなり聞こえづらい。ちょっと待て聞き取りにくいから一旦顔上げろ、と言っても顔ぐちゃぐちゃになってるだろうから嫌だの一点張りで。何でそういうとこだけ強情なんだよお前。別にお前の顔がぐちゃぐちゃだろうが誰も気にしねえよオレしかいねー訳だし。「厄日だ…」というのはかろうじて聞こえた。そうか。厄日か。でも厄日ってだけでそんな泣いてる奴見たことねーぞ。

「とりあえず泣き止もうぜ。皆心配してるし。な?」
「…………ん」
「つーか泣き止んでくれねーとオレが困るんだけど」
「……何で日向くんが困るのさ」

そこには反応しなくていいわボケ。

「とにかく。皆心配してるぞ」
「……あたしだって落ち込むことぐらいあるんだよー。……それに日向くん心配してるように見えないし」
「してるだろうが」
「……こういうときに優しくされたら余計に涙出てくるからやめてよマジで……」

照れ隠しなのか何なのかよく分からんが喋るようになってきたしそろそろ大丈夫なんじゃねーかなコイツ。中途半端にしか優しくできない自分を恨みながらも「嫌だと思うならさっさといつも通りのアホに戻れよ」とだけ言っておく。あんまり人を心配させないでほしいもんだ。肩を小突いてやるとやっと顔を上げたが小さく笑った。やっぱお前そうやってアホみたいに笑ってたほうがいいと思うわ。

prev | INDEX | next