Machine-gun Talk! EX12

黒子くんによると高尾くんとあたしは似ているらしい。暗にお調子者だと言われているような気がして少しショックを受けたけれど、黒子くんいわく「誰とでも仲良くなれるのは素晴らしい才能だと思いますよ」だそうなので、まあ、悪い気はしなかった。高尾くん良い子だし似てるって言われて悪い気はしないね。ちなみに高尾くんとはお互い学校や部活で面白いことがあると報告し合う仲でもある。この間は音楽の授業だか何だかで緑間くんのピアノを聞かせてもらったらしい。緑間くんってピアノ弾けるんだ。初めて聞いた。今度会う機会があれば是非とも聞いてみたいものだ。

さてそんなマブダチの高尾くんから一通のメールが届いたのだけれど、その内容が「美味いラーメン屋があるんすけど先輩行きません?」というこれまた魅力的なものでして。速攻で行くよ!と返信したらめっちゃ喜んでる顔文字と一緒に詳しい日時と場所が書かれたメールが送られてきた。高尾くん用意周到すぎだろ。

さてそんな某日某所。都内のとあるラーメン屋にてホークアイ高尾とマシンガンのラーメンの会が開かれようとしていたのですが。

「高尾くん」
「何スか先輩」
「これは一体どういうことなのかな?」
「いやー先輩たちにラーメン食べに行くって自慢したら『オレ達も連れてけ』ってなっちゃって……すんません」
「いや謝んなくていいんだけどね。高尾くんの後ろからぞろぞろ大きいお兄さん達がやってきたせいでちょっとビビっちゃっただけだから別にいいんだけどね。まさか秀徳レギュラー勢揃いさせてくるとは夢にも思わなかったよ」
「オレだってまさか真ちゃんまで乗ってくるとは思わなかったスよ」
「先輩達から高尾の奢りだと聞いたのでな。それに今日のオレのラッキーアイテムはレンゲだ。ラーメンを食べるのにはもってこいなのだよ」
「誰も奢りだなんて言ってねーんだけど!?」
「えっ高尾くん奢ってくれんの!?」
「だから奢りませんってば!むしろ先輩に奢ってほしいくらいなんスけど!」
「あたしは奢らないよお金ないし。あ、醤油ラーメン一つください」
「オレ塩ラーメン」
「じゃあオレはとんこつと餃子で」
「あ、あたしも餃子頼めば良かったかな……宮地先輩あとで餃子一個ください」
「誰がやるか。そのままお前が座ってる椅子だけ足もげろ」
「宮地先輩のいけず!」
「よーし分かったそんなにパイナップルで殴られてえか。木村。寄越せ」
「ちょっと何マジでパイナップル出してきてるんですかアホなんですか秀徳!痛そう!殴られたらすごく痛そう!」
「……オレを楯にするのはやめるのだよ」

ラーメン屋でこんなに騒がしくしている高校生なんてあたし達だけなんじゃないだろうか。緑間くんの影にサッと隠れると緑間くんを挟んであたしと宮地先輩の退け退かないの応酬が始まった。高尾くんはそれを見てゲラゲラ笑い転げている。大坪さんはそんな部員を大して気に留めることもなく静かにコップの水を飲んでいた。スルースキル高え。

ものの10分足らずでラーメンを平らげる。高尾くんオススメの店とあって味は確かだ。美味しい。少し期待していたけれど最後まで宮地先輩が餃子をくれることはなかった。餃子食べたかったな……。今度中華料理屋さん行こう。食欲が満たされると今度は睡眠欲を満たしたくなってしまうのは自然の摂理な訳で、……眠い。すごく眠い。そして痛……痛い?

「おいいつまでボーっとしてんだ行くぞ!」
「……うえ!?」

びっくりしたせいで変な声出た。何か痛いなと思ってたのはパイナップルで地味に攻撃されていたかららしい。地味に刺さった。地味に刺さってたよ今。先輩達に続いてがやがやとラーメン屋を出……ようとしたところで気がついた。私お金払ってなくね?このままでは食い逃げになってしまう。それはマズイ。引き返そうと振り返ると高尾くんと目が合った。「どうかしたんスか?」いや高尾くん、あたしはラーメンのお金を払わないといけないのだよ……。だから退いてくれ、という意味を込めて早口で言うと高尾くんはにんまり笑って「それなら心配いらないっすよー」と言って先輩達の方を顎でしゃくった。先輩達がどうかしたの?

「さっき先輩達が先輩の分も払ってあげてるの見たんで」

男前なことしますよねー、とおちゃらけて言う高尾くんの目線の先にある先輩達の背中をじっと見つめる。これが…これが先輩なのか…!なんて格好いいんだ…!感激しすぎて言葉も出ない。かっけえ!かっけえよ先輩!好き!一気にテンションが上がったあたしを見て「現金な奴なのだよ」と緑間くんが呟いたのが聞こえた気がするけど気にしない。先輩っていいもんなんだなー。緑間くんも高尾くんもあんな先輩に囲まれててちょっと羨ましいよ。誠凛は最高だけど秀徳もいいチームだよね、と言ったら高尾くんはまたケラケラと笑って、緑間くんは眼鏡をかけ直す仕草をした。もしかして照れてるのか。うん。お礼にまた今度会場で会うことがあれば大坪さんと宮地先輩のお気に入りらしい芸能人のポラロイド持っていってあげよう。ご馳走さまでした!

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